5歳~12歳のわが子の進路選択を未来から考える Vol.2
edu Polaris 第16号(2026年7月5日発行)掲載
記事/ONETES(旧・首都圏模試センター)編集部
「このまま中学受験の勉強だけしていて、本当に大丈夫なのだろうか」「習い事は続けているけれど、それが将来につながっているのかどうか自信がない」―― 中学受験生の保護者なら、一度はそんな不安を感じたことがあるのではないでしょうか。
2026年4月、アルテミスⅡが人類を半世紀ぶりに深宇宙へと送り届けました。宇宙・AI・スタートアップという三つの時代が、いよいよ本格的に重なり合う時代の幕開けです。
中学受験生は、この大転換期の入り口に立っています。中学・高校・大学と進むにつれて、「何を知っているか」より「どう考え、何を創り出せるか」が問われるようになります。探究的な学び・AIリテラシー・創造的思考力の育成が、2030年以降の社会が求めている教育の重要課題として位置づけられているのです。 その土台となるのが、5歳から12歳の時期です。「なぜ?」と問い続ける好奇心、失敗を恐れずに試す力、視野を広げる体験を育むことです。そして、これらはすでに学校の授業以外の学びの場で育まれ続けています。
では、学校の外で子どもたちはどんな学びを積んでいるのでしょうか。そして今、中学受験生の保護者として、何を意識すればよいのでしょうか。学習塾や習い事での「学び方」を少し変えるだけで、3つの時代を子ども自身が見通し、自分の道を開いていける力が育ちます。その具体的な視点をお伝えします。
3)モンテッソーリ教育が注目されているわけ
このように、すでに「非認知能力」を養う学びをしていながら、学び方が実際には、体験して楽しかったで終わっていたり、体験から獲得することが、「知識・理解」を学ぶという程度で終わってしまっている場合がほとんどだったのです。「教育進化の思考コード」は「知識・理解」から「創造・統合」まで9つの領域をカバーすることを大切にしているのですが、実際には最も基礎的な「A1(知識・理解)」の段階で終わっていたわけです。
そこで、9領域すべてをカバーする教育のニーズが高まりました。5歳から第3学年くらいまでで、今注目されている教育観が「モンテッソーリ教育」です。
モンテッソーリ教育が今あらためて注目されている背景には、時代の変化があります。大学入試や中学入試の改革、学習指導要領の見直しなど、「知識を詰め込む学び」から「主体的に考え、行動できる力を育てる学び」へのシフトが進んでいます。
モンテッソーリ教育の幼児教室「チエコトバ」代表の谷口梨花さんに、モンテッソーリ教育について聞きました。谷口さんは、NHK記者を経て、ベネッセで「進研ゼミ」事業や日本最大の学校向けデジタル教育事業の立ち上げなどを担いました。独立後は、企業研修講師として社会人教育にも携わっています。そして、自身の子育てを機にモンテッソーリの道へ進みます。乳幼児から社会人までの教育経験を活かして、モンテッソーリ教育をベースに未来を切り拓く学びの場を創りたいと、2022年東京・新宿にチエコトバを創設しました。社会と大学、中高の教育を現場で支えながらモンテッソーリ教育に行きついているため、5歳から12歳まで貫く学び方についての見識と実践知が豊かです。
谷口さんは、モンテッソーリ教育について、次のように語っています。
モンテッソーリ教育の根幹にあるのは、「子どもには自分自身を成長させる力(自己教育力)が備わっている」という考え方です。つまり、大人が一方的に教え込むのではなく、子ども自身が学びの主役であるという発想です。この「主体的な学び」こそ、まさに現代の教育が目指す姿と重なります。
具体的な活動として、モンテッソーリ教育では子どもが行う活動を「お仕事」と呼びます。これは自由な遊びとは異なり、①自分の意志で選ぶ、②繰り返す、③集中する、④自分でやめる、という4つのステップで構成されます。このサイクルを通じて、「できた!」「わかった!」という達成感が子どもを内面から深く成長させます。主体性・集中力・やり抜く力といった、いわゆる非認知能力が自然と育まれるのです。
また、モンテッソーリ教育では五感と身体を使いながら具体的な体験を重ねることを大切にします。具体的な操作を通じて感覚を豊かにし、やがて抽象的な概念を理解する力へとつなげていきます。この「具体から抽象へ」というプロセスは、算数の理解や論理的思考力の土台にもなります。
1907年に生まれた教育法ですが、その本質はむしろ現代にこそ輝きを増しています。知識そのものよりも、学び続ける力・考える力・自分で切り拓く力が求められる時代に、モンテッソーリ教育は大切な道しるべとなるでしょう。
4)ビアジェ、デューイ、ブルームの教育観も登場
教育の変化を語るとき、私たちの教育実践の土台には、先ほどのモンテッソーリ教育以外にも、ピアジェ、デューイ、ブルームという偉大な教育思想家の考え方がベースにあり、不易流行としての教育の変化であることを知っておくと、いろいろな言葉で表現されている学びの方法論やスキル、メソッドに惑わされにくくなるでしょう。
非認知能力の大切さは、幼児期と小学校低学年の時だけではなく、中高段階でも重視されるようになっています。ですから、教育現場で子どもの心理的発達について、すべての教師が考えています。そのときに、ピアジェの教育観は参考になります。
また、「主体的・対話的で深い学び」や「探究」が学習指導要領で重要な柱になっていますから、デューイは再び注目を浴びています。
そして、モンテッソーリ、ピアジェ、デューイは同時代人ですが、一世代後のブルームは、彼らの学びの方法を「タキソノミー(学習目標の分類体系)」としてまとめた学習科学の先駆者として重視されています。最近、単なるスコアによる5段階評価や偏差値ではなく、「ルーブリック(思考の質を段階的に示す評価基準表)」によって評価することが重視されていますが、その発想の出発点はブルームの教育観です。4人の教育観は、いずれも知識を詰め込むのではなく、子どもが自ら自分の学び方を体得し、成長する段階でその都度遭遇する多様な問題を仲間と協力しながら解決策を見出していく能力を生み出す教育を目指しています。
もちろん、それぞれの理論は違いがあるものの、互いに深く結びつきながら「子ども中心の教育」を形づくっています。
ピアジェは、子どもの思考が「0~2歳の感覚運動期」から始まり、「形式的操作期(11歳頃~)」まで、段階を追って質的に変化していくことを示しました。子どもは大人の「小さなコピー」ではなく、その年齢ならではの思考スタイルを持つ主体的な存在です。この発達の「工程表」は、何をいつ教えるべきかを考える上での大切な土台となっています。
モンテッソーリも、子どもの発達段階に合わせて「整えられた環境」と「教具」を実践に落とし込みました。子どもが自ら手を動かし、自分のペースで活動する「お仕事」を通じて、感覚と知性が豊かに育まれます。
デューイは「なすことによって学ぶ」という考え方のもと、教育を知識の詰め込みではなく「生きた経験そのもの」と定義しました。学校を小さな社会と捉え、子どもたちが仲間と協力しながら問題を解決していくプロジェクト型の学びを重視しました。
ブルームは、学習の「深さ」を「記憶→理解→応用→分析→評価→創造」という6段階で整理しました。ただ覚えるだけでなく、自ら考え、創り出す力を育てることを目標に掲げています。
この4人の関係を一言で表すなら、ピアジェが「成長の仕組み」を解明し、モンテッソーリが「環境」を整え、デューイが「経験と社会性」を与え、ブルームが「学びの質」を定義した、と言えます。そして、これら4つの教育観を統合して、子どもが自ら学びのコンパスとして、自分の最高の学び方を目指す学びのフレームワークが「思考コード」です。これは中学受験生が挑んでいるONEテストで活用されています。
したがって、思考コードの9つの領域で4つの教育観すべてをカバーしているのです。
教育情報誌『edu Polaris(エデュポラリス)』とは?
情報誌『edu Polaris(エデュポラリス)』は、ONETES株式会社(旧・首都圏模試センター)が年3回実施する「適性ONEテスト」受検生全員に配布して、公立中高一貫校を志望する小学生と保護者をはじめ、お子さんをもつ多くのご家庭に「わが子の教育と進路を考える」うえでお役立ていただけるような入試情報・学校情報をお伝えする冊子です。一部の取り扱い書店やAmazon、楽天でも販売しています。
2021年~2025年までは、『my TYPE(マイタイプ)』という誌名で発行してきましたが、この2026年3月から会社名を「ONETES株式会社」と改めたことにともない、誌名も『edu Polaris(エデュポラリス)』と改称しました。
Vol.3につづく
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