学校特集
東京電機大学中学校・高等学校2026
放課後学習室で育む“主体的な学び”
掲載日:2026年6月4日(木)
理系教育と探究学習に定評のある東京電機大学中学校・高等学校は、JR東小金井駅から徒歩5分という好立地にあります。同校では放課後学習支援「メンター自習室」を通じて、生徒が主体的に学ぶ姿勢を育てています。常駐する大学生メンターに気軽に質問できる環境づくりに加え、学習イベントや授業連動型の企画も充実。生徒たちが「勉強してみよう」と自然に思える空間づくりを進めています。今回は中2担任であり、放課後学習支援担当者の一人である金岡克倫先生に話を聞きました。
大学生メンターが常駐する"行きたくなる"自習室
東京電機大学中学校・高等学校では、放課後になると1階カフェテリアに多くの生徒が集まってきます。ここは、毎日複数名の大学生メンターが生徒の学習サポートをしてくれる、相談OKの「放課後自習室」。友達同士で問題を解いたり、大学生メンターに質問したり、時には話し合いながら机に向かったり――。同校が取り組む「メンター常駐の放課後自習室」は、静かに黙々と勉強する従来型の自習室とは異なり、にぎやかで活気と熱気にあふれています。
放課後学習支援を担当する中2の担任・金岡克倫先生は、「補習のように"やらされる"学習ではなく、生徒が自分から来たくなる空間にしたいと考えています」と話します。
同校では以前から静かに勉強することができる自習スペースを設けていますが、昨年度から大学生メンター常駐型の自習室も設置しました。1年経って自習室がうまく機能するようになり、生徒たちの参加の仕方や意識も徐々に変わってきました。「中学生は、勉強への苦手意識や"どう勉強すればいいのか分からない"という不安を抱えているケースも少なくありません。そこで、"まず自習室に足を運ぶ""自分から問題に取り組む"ことを大切にして、学習習慣づくりにつなげています」(金岡先生)。
生徒が自分で自習室に行く仕掛けがいくつもあります。その1つが、中学生向けに行っている「マイコーチ」という取り組みです。これは、担任の先生が声をかけた生徒を対象に、大学生メンターが日々の学習状況を確認しながら伴走する企画。生徒は自習室に通ってメンターにノートや宿題を確認してもらったり、曜日ごとに数学や英語などの課題に取り組みます。
「教員が保護者と連携して声をかけていますが、強制ではなくあくまで参加を決めるのが本人であることがポイント。主体的に学ぶことを大切にしたいので、補習のように『行かなければいけない』ではなく、『行ってみよう』と思える形をとっています」(金岡先生)
模試解説やメンターのミニ授業など魅力的な企画も
今年度の新しい試みの1つは、大学生メンターによるミニ授業です。対象となるのは、学習に前向きに取り組んでいる生徒たち。数学や英語を中心に、もう一歩力を伸ばして最上位層を目指せる生徒向けに実施しています。
「教員の授業とは違ってお兄さん・お姉さんに近い感覚で話せるので、生徒たちも耳を傾けやすいようです。もちろん授業と連携した内容を私たちが準備しますが、教え方はメンターに任せています。年齢や距離感が近い分、教え方が分かりやすかったり、質問する時のハードルも低いようです」(金岡先生)。
模試の解説イベントや英検対策講座なども開かれており、こちらも参加を決めるのは本人。自習室担当教員と各学年の担任が話し合って定期的にさまざまなイベントや企画を実施していますが、すべて"生徒が自ら選んで参加する"ことを大切にしているのが特徴です。
メンター自習室では、ただ学習を教えるだけではありません。生徒が少しずつ「できるようになった」と感じられるよう、様々な工夫も取り入れられています。
たとえば中2の英語科では、授業と連動した"プレテスト"を作成しています。指定範囲の問題演習を終えた生徒に、授業で実施する小テストそっくりの確認テストを自習室で配布するのです。スタンプカード形式で達成感を得られる仕組みもあり、生徒たちもゲーム感覚で前向きに取り組めるうえ小テストの準備もできるのです。
こうした工夫のおかげで、放課後になると毎日のように自習室へ通う生徒も少なくありません。特に中1・中2の利用率は高く、友達同士で誘い合って来室する姿も多く見られるといいます。
メンターに「できた!」と報告に来る生徒も
昨年から勤務しているメンターは、「毎週来てくれる生徒も多くて、『今日はここまで進んだ』『これを終わらせたい』と自分から話してくれます。自然と顔と名前を覚えるので、こちらも『じゃあここまで頑張ろうか』と声をかけやすいですね」と話します。
「大学の専門は経済学ですが、担当教科を固定せず、英語・数学・古文・社会など幅広く質問に対応しています。いっさい勉強していない状態から『やろう』と促すのは難しいですが、この自習室では"宿題を終わらせたいから教えてほしい"など、自分からやりたい課題を持参する生徒が多いんです。主体的に来てくれるので、こちらとしてもサポートしやすいですね」と、生徒たちの前向きな姿勢を感じているようでした。
また、理系学部に通うメンターは、「宿題や授業プリント、塾の課題などを持ってくる生徒が多いです。解説を見ても分からない問題を一緒に整理しながら教えることが多いですね」と話します。
やりがいを感じるのは、継続して通っている生徒の成長を実感するときだそう。「去年、集中的にサポートしていた生徒が今も継続して利用してくれていて、『これができるようになった』と報告してくれるんです。私たちも成長を実感できてとても嬉しいですね」。
大学生メンターにとっても、生徒との距離が近いことはこの自習室の大きな特徴になっています。名前を覚え合い、日々の会話を重ねながら信頼関係を築いていく――単なる"質問対応"ではなく伴走者としていい関係を築いている様子が伝わってきます。
昨年度、この自習室を活用して大学に進学した卒業生からは「いろいろな大学や学科のメンターがいるので、どの教科でも気軽に質問できました。現役大学生だからこそ、大学生活や受験期のリアルな話を聞けるのも新鮮で、進路を考える上でも参考になりました」「メンターと一緒に受験までの学習計画を立てて勉強を進めました。実際に大学受験を経験したばかりの現役大学生のアドバイスは具体的かつ的確で、自分に合った勉強法やモチベーションの保ち方まで相談できたのが心強かったです」といった声が寄せられています。
メンターとコミュニケーションできる"第三の居場所"に
実際に今、自習室を利用している生徒たちは、この空間をどのように感じているのでしょうか。放課後に自習室を取材で訪れると、50人ほどの生徒がにぎやかに机に向かっていました。2人で英語の問題集や宿題に取り組んでいる中3の女子生徒は、メンター自習室が始まった当初から継続して利用しているそうです。「メンターの先生は呼んだらすぐ来てくれるし、フレンドリーで教えるのがすごく上手なんです。放課後はだいたい毎日、閉室の時間までここで勉強しています」「友達と一緒に気楽に勉強できるのがいいですね。明るいカフェのような雰囲気だし、毎日開いているので通いやすいです」と笑顔で話してくれました。
特に印象的だったのは、「数学が楽しくなった」という言葉です。「ここに来る前は苦手意識もあったけど、メンターの先生たちと話しながら取り組むと、分かることが少しずつ増えて、問題を解くのが楽しくなりました。大学の話も聞けるので、高校生になった後や進路について考えるきっかけにもなっています」。
大学生メンターとの何気ない会話も、生徒たちにとっては刺激になっているようです。大学生活や学部の話、キャンパスの雰囲気、研究内容など、"少し先の未来"を身近に感じられることも、学ぶモチベーションにつながっています。
また、「職員室より質問しやすい」という声も多く聞かれました。「職員室ってちょっと緊張するんです(笑)。でもここだとフレンドリーで聞きやすい。友達と一緒に『ここが分からない』って聞けるので、すごく助かっています」(中2女子)。
勉強だけでなく、誰かと会話しながら安心して学校生活を送れること。その積み重ねが、やがて主体的に学ぶ姿勢へとつながっていきます。子どもたちを取り巻く環境が大きく変化する今、教室やクラブ、家庭以外の"もう一つの居場所"があることも大切です。友だちや先生とは違う距離感を持つ大学生メンターと日常的にコミュニケーションを取れることが、生徒たちに安心感を与え、自分らしく学校生活を送る支えの一つにもなっているようです。
集中して静かに学ぶ自習室も設置
現在、メンター自習室は中1・中2・高1を中心に利用が広がっており、定期試験前にはさらに多くの生徒が集まります。一方で利用者増加に伴う課題もあり、静かに集中したい生徒向けの環境整備なども進めています。
「人数が増えてきたことで、集中したい生徒には少し賑やかに感じることもあります。相談禁止の自習室も別室で用意していますが、今後は用途に合わせた環境づくりも必要だと感じています」(金岡先生)
それでも金岡先生は、この取り組みの手応えを強く感じています。
「去年、中1だった生徒たちに『1年前はこの自習室なかったんだよ』と話したら、『自習室がなかったら困る!』と言われました。それほど学校生活の中に入り込み、生徒にとって大切な居場所として定着してきたのだと思います」
さらに金岡先生は「モチベーションが上がった生徒も多い」とも話します。「以前は、教員が補習をするか、生徒が自分で頑張るかの二択でした。でも今は、仲間やメンターがいる場所で自然に机に向かえる。まずは学校が楽しい、放課後に来たいと思えることが大事なんだと実感しています」。
探究学習や卒業論文など、以前から「主体的に学ぶ姿勢」を大切にしてきた東京電機大学中学校・高等学校。放課後学習支援もまた、その教育方針を支える新たな取り組みとして少しずつ進化を続けています。生徒同士が教え合い、大学生メンターが寄り添い、教員がその土台を支える。放課後のカフェテリアには、"学ばされる"のではなく、"自分から学びたくなる"心地よい熱気に満ちた空気が確かに広がっていました。
