学校特集
武南中学校・高等学校2026
掲載日:2026年9月26日(土)
1963年創立、2012年には中学が開校し、その充実した教育内容から年々高い人気となっている武南中学校・高等学校。建学の精神「自主・自立・自学・協同」のもと、社会に貢献する高い志を育み、「国際社会で活躍する高い知性と探究心、豊かな教養を身に付けた人材の育成」を目指しています。
同校の探究学習とその学びを推進するフィールドワーク、そして英語教育について、国語科で中2を担任する木下みのり先生と英語科で中3を担任する福田恵理奈先生に伺いました。
授業と体験が結びつき、
より自分ごととなる学びを
探究学習を軸とし、授業と豊富なフィールドワーク(以下、FW)を有機的に組み合わせることで、より深い学びを展開している武南中学校。
国語科で中2を担任する木下みのり先生は、進化を続ける同校の探究学習についてこう話します。
木下先生:「学びと体験を二重螺旋的な形で構築することにより、最終的に生徒たちが自学力を身に付けることを目指しています。
今年度よりFW当日の体験はもちろん、事前・事後学習のプロセスをこれまで以上に厚くすることで教科へ還元していくよう強化しました。授業と探究学習から生じる疑問を通して主体的に考える学びを展開しています」
中2で実施するFWの一つに「歌舞伎鑑賞教室」があります。今年は傑作と名高い『仮名手本忠臣蔵』の中でも、名場面が多いとされる五段目と六段目を鑑賞した生徒たち。
『忠臣蔵』を理解する上で必要なのは、主君への思いや忠義の心とはどういうものなのかを知ること。しかし、現代を生きる生徒たちにとって"主君"や"忠義"への理解は難しいことかもしれません。
木下先生:「まず社会科の授業で、歌舞伎の歴史や江戸時代の忠義とはどういうものなのかを学びました。その上で『仮名手本忠臣蔵』は江戸時代に実際に起こった赤穂事件を室町時代に舞台を変えた演目ですが、その理由を様々な歴史背景などをベースに学習を進めました。
国語科では、歌舞伎がなぜ江戸時代の人たちの心に刺さったのかというところから学びをスタートさせ、社会科で学んだ当時の状況と現代の社会情勢や時代背景を比較して思いを馳せました。"主君"や"忠義"は、保護者や先輩との関係性を考えるなど、自分ごととして捉えるよう促しました」
なお、今年度からは全学年でFWのしおり作成にもこだわっています。この歌舞伎鑑賞教室のしおりには、場所や行き方、歌舞伎のあらすじなどのほか、工夫が凝らされています。
木下先生:「学習内容もしおりの中に組み込んで振り返られるようにしました。まず鑑賞前に好き・嫌いを書き、観た後にはその気持ちに変化はあったのか、どう変わったのか、なぜ変わらなかったのかなどを考えました。
自分のものの見方や感じ方を1冊のしおりにまとめることにより、すべてのFWについてポートフォリオ化できる形にしました」
FW終了後の国語の授業では、実際に歌舞伎を観た感想をそれぞれが手書きでまとめ、グループワークを行って、最終的にはホールにて学年全体で意見を共有しました。
木下先生:「同じ演目を観たにも関わらず、歌舞伎はストーリー展開がおもしろくて好きという生徒や黒子による迫力ある演出が楽しかったなど、各自の観点に触れられました。
鑑賞前、例えば何を言っているかわからないから嫌いと書いた生徒の中には、鑑賞後は登場人物の心理や行動が理解できないから苦手という感想も。苦手意識は変わらなくても、本物を観て触れたことで意識の質の変化が見られました。
生徒たちは人物相関図を作るなど、理解を助け、苦手意識を払拭して学びを深めるようなアイディアを考えて発表してくれましたし、メディア論などにまで話が広がったことも興味深かったですね。江戸時代と現代の環境も含めて検証し、文化を守り、継承することの難しさも考える、有意義な時間となりました」
「自分の感じたことを自らの言葉で語れるようになってほしい」と話す木下先生。自分としっかりと向き合いながら他者の意見にも触れる学びへと昇華させています。のびやかに自身の意見を言い合える環境で、自分の変化に気づきつつ、様々なFWや学びを通じて大きく成長しています。
段階を経ながら、なりたい自分に近づく
経験を積み重ねる教育
武南では各学年の目標として、中1は情報収集できる力の獲得を目指しています。中 2ではその調べたものを比較し、中3では比較したことを自分はどう考えるのか、その目線を自分自身の内面へと向けています。中3の担任を務める福田恵理奈先生が教えてくれました。
福田先生:「中3では、それまで身に付けた、調べる・比較する力を使いわかった事実を深掘りし、自分の意見として言語化することを目標としています。
こうした力は高校以降の進路選択の際に、興味関心のある大学を調べて見つけて比較し、自分に何が必要なのかを考えて行動できるものへと繋げています」
実際に生徒たちの進路選択において、FWでの学びは大きな影響を与えています。例えば美術のFWでは毎年、東京国立博物館や国立西洋武術館などを訪ねます。なお今秋は、東京都美術館の100周年記念展で展示される『落穂拾い』などの名画を観に行く予定なのだとか。
木下先生:「進路選択時に、中学時代のこのFWでの経験に戻ってきてくれることも少なくありません。美術FWを契機に文芸学部を選んだ生徒や中2のアジア研修で発展途上国の現状を目の当たりにし、観光学部へ進学した卒業生もいます。いろいろなものを敏感に感じ取れる中学生の段階から本物や世界的な芸術に触れることで、こうした選択における種を植えられたのかなと思います」
また、総合型選抜での志望理由書で中学の時のFWでの経験を書く生徒も多いのだそう。これら様々な経験を通じて生徒たちが培ってきた表現力が随所にも生かされています。
木下先生:「一般入試でも自分で学び続ける力は大切ですし、総合型選抜での自分の経験を自身の言葉で語れる力は、彼らにとって財産になります。
そのために本校では多彩なFWを用意して、ゼロからイチを生み出す力やものごとに取り組む意欲を育てたいと探究学習に力を入れています」
なお、9月に開催された文化祭では、生徒たちに有志としての参加を呼びかけたのだそう。
木下先生:「かなり多くの生徒が手を挙げてくれました。日々の学習やFWなど、生徒たちにとってやることがたくさんあることは事実ですが、各々の興味関心を広げるという点で、充実した学校生活が送れているのではないかと思います」
2日間にわたり行われた舞台発表では、開始から終了までスケジュールが埋まるほど、たくさんの団体が参加しました。
木下先生:「普段の学校生活では見られない特技の披露や、この日のためにイチからダンスなどの練習に取り組んだ生徒たちの姿にも感動しました。また、発表する生徒だけでなく、観客席から応援する生徒たちも一体となって会場を盛り上げていたことも印象的です。ステージに立つ生徒も応援する生徒も非常に生き生きとしており、"青春"を存分に感じられる空間でした。
『来年は自分も出てみたい』という声も多く聞かれ、生徒たちのチャレンジ精神に繋がったのかなと嬉しく思います」
「中学生のうちから、より興味関心の幅を広げられる環境を作ってきたからこそ、挑戦する力を身に付けた生徒たちが育ってきたと感じます」と木下先生は話します。同校では生徒たちが自分や他者を認め合いながら、実にのびのびとチャレンジすることを楽しんでいます。
そうした姿勢は3年間で20回ほども行われるFWだけでなく、日々の授業の中でも養われています。
英語4技能を活用して何ができるか、
伝える力を育む英語教育
英語は、週4、5時間の授業に加えて週2時間の英会話を行っています。
福田先生:「本校では英語4技能の力を使って何ができるかをテーマに、英語"を"学ぶのではなく、英語"で"学ぶ教育に取り組んでいます。ただし、帰国生はほぼいませんし、海外経験がある生徒もそう多くはありません。
そのため、ほとんどの生徒は小学校で学んだ英語がベースになっているので、アルファベットが読めて書ければOKと新入生たちに伝えています」
アウトプットを重視しており『フォニックス』を使って、アルファベットの読み方から英語の正しい発音を学んでいます。
福田先生:「最初のうちは人前でのプレゼンテーションに苦手意識を持つ生徒も多いのですが、月に一度は必ず様々な形で発表の機会を設けています。探究学習でもたくさんプレゼンをしているので、場慣れしてどんどん堂々と発表できるようになっていきます」
英語科では、中1は"英語で"身近なものや自分のことを表現できることを目標にしています。中2では探究学習との兼ね合いもあり、"比較"や"違い"に着目します。中3になると、ディベートやディスカッションにも力を入れ、自分が調査してわかったテーマに対して、自分ごとに置き換えて発表することを軸とした学びを推進しています。
福田先生:「たとえ文法などが間違っていたとしても、我々英語科教員やALTたちは容認することに注力しているので、生徒たちの"とにかく伝えたい"という熱意を重視しています」
なお、中1と中2は蕨市が主催するスピーチコンテストにも挑戦しています。参加する生徒たちは意欲的に取り組んでおり、実際に優秀な成績を収めています。
そうした経験をバネに、模擬国連のディスカッションに臨んだ生徒もいます。(当時)中2と高2の生徒はオールイングリッシュで行われる模擬国連大会「JEIMUN(Japan Educational Institution Model United Nations)」に挑戦しました。模擬国連の強豪校が揃うなか、この生徒たちはイランを担当国とし、その立場や利害を的確に整理したうえで交渉の進め方をまとめたポジションペーパーを作成。この内容が高く評価され、参加校約60校の中からポジションペーパー賞に選出されるという快挙を成し遂げました。
現在高3になったこの生徒は、国際関係の仕事に就きたいと志望大学合格を目指し頑張っています。
福田先生:「この生徒に限らず、これまで探究学習を通じて様々な物事に触れ考えて、自分の意見にも根拠を持ち、英語でも何かを伝えることができるようになっています。こうした物怖じしない姿勢には、探究学習で培われた力を感じています」
先生方が丹念に行っている種蒔きの一つひとつが結実していることがわかります。
探究や英語での学びが
実生活の中でも息づいている
なお中2から、論理的かつ説得力をもった表現技法・"OREO(オレオ)スタイル"で表現することに取り組んでいます。
"オレオスタイル"とは、まず自分の意見(Opinion)を主張し、次に理由(Reason)としてなぜそう思ったのか、さらにより具体的に説明(Explanation)し、最後にもう一度自分の意見(Opinion)を伝えるというもの。
福田先生:「まずは自分の好きなことを、このオレオスタイルで書くことから始めました。このスタイルでまとめていくことで、自分の考えに根拠を持って理由を説明できるようになっていき、中3になると自分で考えて足りない要素に気づいて書き加えられるようになります。このスキルを磨くことで英文を書くときはもちろん、探究学習でも自分の考えをまとめられる成果に結びついていると感じます」
福田先生のお話を聴いていた木下先生。取材に訪れたこの日、女子生徒からある頼みごとをされた、と教えてくれました。
木下先生:「友だちと仲違いをしてしまったけれど、仲直りしたいから間に入ってほしいとのことでした。それぞれの言い分をきちんと聞いて仲裁せねばと考えていましたが、その子が『ちゃんと自分の思いを伝えたいから"オレオ"で話すね』と言うのです。彼女たちは、自分はどう感じたか、その上で相手への思いを伝え、『でも嫌いとかではないから仲良くしたい』と話していました。話し合いがこう着状態になったらなどと身構えていましたが、そのやりとりを見てとても感心しました。
生徒たちにとって友達とうまくいっていない状況は、学校に行きづらい理由になったり、勉強に気持ちが向かない原因になったりします。しかし、そうした時にも、考える力を持ってさえいれば、きちんと伝えられるということを学びました。英語科での取り組みが、実際の彼女たちの生活にも息づいていることを目の当たりにしました。
なおこの生徒たちは、以前よりもっと相互理解が進み、今では絆がさらに深まっているようです」
物事を多角的に見る視野を身に付け
想像力と創造力を育む武南の教育
武南では高校からの入学生がいますが、中高一貫生たちは先生方からどう見えているのでしょうか。
福田先生:「探究での学びを通じ、物事を多角的に見られていると感じます。一貫生たちは単に調べるだけではなく、どんな経緯を経てそうなったのか、背景を知りたがります。
その上で自分自身の考えをまとめます。意見を言える力や探究する心、知的好奇心は生きていく上で必要なものです」
先生にそれぞれの教科が苦手な生徒への対応について伺いました。
福田先生:「個々の教員によってもアプローチは異なりますが、中1ではまず学習習慣の確立を目標とし、生徒自身の中で見えてきた得手不得手を選別する時期だと考えています。中2では、どんなことが引き金になり、どうしてつまずいているのかを一緒に模索しながら、解きほぐしていきます。中3は家庭学習が定着してきて、生徒自身も何をしなければいけないのかを自分で考えられるようになってきますが、理解を深めるために何をすればいいのかの架け橋を一緒に作っています」
木下先生:「国語力の伸長というのは、非常に対策がしづらいものです。私自身、抽象度が高い国語を教えるにあたり壁にぶつかった時もあります。最終的に国語力というのは、他者に寄り添ったり想像したりできる力だと考えています。国語ができるようになることは、日々の友人関係にも生かせると思っています」
さらに続けます。
木下先生:「教育の最終的なゴールというのは、頑張る力や苦手なことから逃げない力を育てるということ。その一つの方法として勉強があります。最終的に考える力や頑張る力があれば、与えられた環境の中で自分で考えて動くことができるようになるでしょう。
学校はいくらでも失敗していい場所です。生徒たちのやってみたいという心に寄り添いつつ、できたときにはきちんと認め、彼らの自己肯定感を上げ続けると決めています。
生徒たちとのコミュニケーションを大事に紡ぎながら、なぜ?どうして?という思いを大切にして、伴走者としての役割をしっかり果たしていくことによって、生徒自身の考える力ややってみようと思える力を育んでいきたいと思っています」
知的好奇心を持ち続け、思考を深めていき、かつ想像力や行動力を持って他者に寄り添える土台を育んでいる武南中学校・高等学校。何よりも生徒たちがのびやかに学校生活を送っているのがこうした教育の証左です。ぜひその雰囲気を味わいに学校へ足をお運びください。
