学校特集
聖徳学園中学・高等学校2026
掲載日:2026年9月4日(金)
1927年創立の伝統校・聖徳学園は、聖徳太子の教え「和をもって尊しと成す」を建学の精神とし、生徒一人ひとりの個性や興味、多様性を尊重する教育を行っています。同校では「STEAM & GLOBAL」をキーワードに、先進的かつ唯一無二のSTEAM教育を展開。革新的な取り組みを通じて高い創造性を育んでおり、変化の激しい時代に対応できる力を養成しています。情報科で総合科主任の木村剛隆先生とチーフスタジオディレクターの川合 元先生に同校のSTEAM教育について伺いました。
世界と視野を広げながら成長する
聖徳学園のクリエイティブ
教育目標である「自分の強みを生かし、世界とつながり、新しい価値を創造する人を育てる」に則り、段階的かつ実践的に学んでいる聖徳学園。
情報科・総合科主任の木村剛隆先生は、同校のSTEAM教育について「誰かのために作ることを通して、生徒たち自身の世界や社会が様々なつながりをもちながら少しずつ広がっていくように全体をデザインしています」と話します。マイナーチェンジを重ねつつ様々な手法を取り入れながら、中1から高2まで実施しています。
3月には、学びの集大成として「Shotoku STEAM FES」を開催。各学年で最優秀賞を獲得した生徒たちは、会場である90周年ホールに敷かれたレッドカーペットを通って壇上へ上がり、プレゼンした上で審査員の講評を得るという、次の学びにつながる場にもなっています。
創造性を育む第一歩は、
チームで取り組む動画制作
中1はSDGsをテーマにし、粘土で作ったキャラクターなどをひとコマずつ動かして撮影するクレイアニメを使ったストップモーション動画を制作します。約半年間に渡り、5名程度のチームを作り企画・撮影・編集作業に取り組みます。
主に中1と中2のSTEAM教育を担当するチーフスタジオディレクターの川合 元先生は、
「中1のSTEAM授業の中で大切にしているのは、クラスメイトとのつながりを構築しながら一緒にものづくりをしていくことです。最初の授業で過去の優秀作品を見た上で臨むので、ハードルを感じるかもしれませんが、先輩ができるなら自分たちもと、励みにしてほしいですね」
中1全グループの作品は『Shotoku STEAM FES』内の『聖徳映画祭』で上映されます。
川合先生:「実は昨年度優秀賞を獲ったチームは、衝突ばかりしていたんです。思いがなければ衝突は起こりません。怒りはエネルギーになることもありますし、そうした経験をみんなで乗り越えていくことで、作品がより良くなった部分もあると思います。我々も生徒たちの様子を見ながらの声かけを大事にしていますが、衝突や思うようにできなかったという経験は生徒たちを大きく成長させてくれますし、次につなげてほしいですね」
自身も映像のプロとして、これまでのキャリアの中で映画撮影や動画制作を行ってきた川合先生。映像作品を作ることの意味を聞きました。
川合先生:「一生懸命作った"記録"が、他の誰かの"記憶"につながるということに醍醐味があると感じています。作って終わりではなく、見た人の中に生まれた感情や答えをすり合わせたり共有したりする中に成長があると思います。私自身、映画館でスクリーンを通して成長させてもらった人間なので、生徒たちにもその感覚を味わってもらえたらうれしいです」
生徒たちは中1から、物語を要約して伝える3行ストーリーと呼ばれる「ログライン」や、聴覚や言語よりも表情やしぐさといった視覚情報が最も強い影響を与えるという「メラビアンの法則」などの撮影の専門用語や理論を学びます。さらに美術科とコラボして「三分割構造」や「ネガティブスペース」といった視覚効果なども学習します。
こうしたプロの大人たちが実際に使う専門性に触れることで、生徒たちの表現や思考の幅も広がります。川合先生が指導して4年目になりますが、映像づくりのクオリティはかなり上がっているのだとか。
川合先生:「テーマは大事ではありますが、心がけているのは『なぜ作りたいのか』という動機を最も大切にすること。自分事として捉えられるモチーフをまず考え、テーマを組み合わせています。そのため、特に中1のSTEAMでは、企画書作りに長い時間をかけます」
『聖徳映画祭』の優秀作品は企画書の精度やキャラクター造形、ストーリー性などのルーブリックが設けられ、基準を明確化した上で決定されます。
生徒たちからの要望も聞きつつ
学びの内容もリニューアル
中2では生徒たちからの要望もあり、実写版での動画作成に挑戦します。中2では学校という"小さな社会"を通じて、視点や社会が広がっていくことを意識しています。
英語科・オーラルコミュニケーションの授業とコラボし、日本語または英語で作った動画に字幕を付けてバイリンガルで表現します。優秀作品は『Shotoku STEAM FES』内の『聖徳国際FILM FES』で発表されます。
川合先生:「モチベーションにつなげるため、好きや得意に特化させようと考えており、推しを見つけてその魅力を国際的に伝わるような形で発信します。インタビューなのかドキュメンタリー形式なのか、ドラマやミュージカル仕立てかなど、どういった表現方法を取るのかはわかりませんが、どんな映像が出来上がるのか、とても楽しみですね」
初回の授業では、1分ほどの小編映画を見て、主人公の行動の意味を考えた上で、その後のストーリーを作ってみるというグループワークを行いました。
川合先生:「生徒たちは正解のない答えを考えました。彼らからは本当にユニークな答えがたくさん出てきて、それを共有できたことがうれしかったですし、私が楽しませてもらったくらいの気持ちです。
彼らは実に多様な個性を持っています。ものづくりにおける"センスの塊"という子も多くいますが、撮影が得意な子、物語を紡ぐことが好きな子、みんなをまとめる力に秀でている子など、そうした各自の特性や持ち味をそれぞれが発揮しながら共に作品づくりをしていくこと自体に学びや気づきがあります。一人ひとりの成長に結びついてもらえたらと思います」
なお、中2は毎年5月に鎌倉で研修を行っています。今年は好きなお土産を購入し、食レポ動画の作成に臨みました。
川合先生:「食レポでは、分析力と語彙力と表現力が必要になりますが、『美味しい』という言葉を使わないよう求めました。生徒たちには優秀な作品は各企業の広報さんに送るつもりと伝えています。またこの食レポを通してアクションを行うことで、さりげなくではありますが、鎌倉の魅力を伝えることになり、地域貢献や企業貢献にもつながっていると思うのです」
自分の「好き」「伝えたい」
気持ちを力に学びを推進
中3では視点をさらに広げ、自分と社会とのつながりを考えていきます。2026年度においては、中学3年間の集大成として行う予定なのは『偏愛ブックマーケット』と称した同人誌づくりです。
木村先生:「中1と中2で積んできた豊富な経験・体験を活かし、自分の好きなことを切り口としてテーマ設定を行います。本の形にしてみんなに見てもらい、仮想通貨のようなものを作って、"聖徳版コミケ(コミックマーケット)"を開催したいと考えています」
中3では基本的に個人で探究を行います。雑誌でも漫画でも教科書や問題集でも写真集でもどんなアウトプットでも構わないと話す木村先生。
木村先生:「グループワークで培われる力も大切ですが、時にそれぞれの意見を尊重するが故にいろいろな調整が入ってしまうことがあります。そのため、中3では他者に遠慮や忖度することなく、自分が本当に好きなものや伝えたいことを"偏愛的"に突き詰めてほしいんですね。"好き"は正義ですし、好きな気持ちをパワーに変えていくことは探究に向かう種にもなります」
本づくりに取り組むことで、どんな学びを期待しているのでしょうか。
木村先生:「自分の思いをわかりやすく伝えるためにはどう表現したらいいのか、どんなデザインならより伝わるのかなど、本づくりには様々な要素が詰まっています。
今後プレゼンする機会もより増えていくので、企画内容を深めることはもちろんですが、資料などをまとめる際にデザインの力を使うことで、伝えられるレベルを上げることができます」
アウトプットを重視したSTEAM教育の業績を認められ、Apple Distinguished Schoolに認定されている聖徳学園。デジタルの最先端教育に取り組みつつも、こうした手触り感を大切にしていることが大きな特徴です。
木村先生:「言葉での発表をメインとしたプレゼンテーションは記憶に留まりにくいように感じています。そのため本といった温かみがあり手に取れるアナログなものでプレゼンできるというのは、まさに"記録"にも"記憶"にも残るものだと思っています」
生成AIも積極活用
だからこそ磨かれるクリエイティビティ
高1のテーマは「未来とつながる」です。ここで意識するのは「自分自身の未来」です。
木村先生:「情報の授業の一環として、『ボードゲームデザインプロジェクト』に取り組みます。自分はどんなことが好きなのか、どんな社会課題に関心があり何がしたいのかを探り、その"好き"や"興味・関心"を探究活動としてボードゲームという作品に落とし込みます」
それにしてもなぜ、ボードゲームなのでしょうか。
木村先生:「今の時代、デジタルでいろいろなものを作れるからこそ、アイディアだけで終わることなく、きちんとアナログでアウトプットすることが、ものづくりをしていく上で大事なことです。出力してみたら思っていた色と違ったという感覚などもかなり重要で、デジタルで作っただけではわからないことが見えてきて多くの学びが潜んでいます。レーザーカッターや3Dプリンタなどいろいろなツールを使いますし、自作のアプリケーションと組み合わせる生徒もいて、より面白さが増していきます。こうした様々な技術が結びついて完成するのがボードゲームです」
ボードゲームづくりを通じてできることが増えることで、自信へとつながり、もっとこんなことをやってみたいという思いが強まり、探究のレベルも上がっていると話す木村先生。何度もプロトタイプ(試作品)を作って試行錯誤を重ねながら制作を行います。
なお現在の技術革新について、先生方はどう捉えているのでしょうか。
木村先生:「生成AIは授業者によってスタンスは異なりますが、我々の授業では積極的に活用しています。例えばアプリを作る際にコードから勉強しているとラーニングコストが膨大にかかりますが、生成AIが登場したおかげで簡単にできるようになりました。生成AIにはクリエイティブでない作業をやってもらうことで、生徒たちは最初のアイデア出しと最終的な部分を担い、社会課題を解決するための企画を深めることに時間を割くことができます。
AIが出してきたものの良し悪しを判断するためには、ある程度の知識や技術が必要です。聖徳のSTEAMではArtの部分も大切にしているので、生徒たちにはAIを使ったとしても自分自身の創造性を入れ込むように常に口酸っぱく言っていますし、頭と手を動かすことを大事にしてほしいですね」
木村先生は情報科の教員として、パソコンの基本操作はもちろん、そもそもどうして動くのかという仕組みや拡張子についても伝えています。あわせて情報デザインや著作権といった知的財産権なども教えています。
木村先生:「大学入学共通テストの科目に『情報Ⅰ』が組み込まれましたが、情報の知識というのは生活に直結しています。自分自身のプロダクトを作る際にも、著作権や産業財産権、特許などを意識することは必要です。ピンとこないこともあるかもしれませんが、いざという時に学んだことを思い出して知識が定着してくれたらうれしいですね。実践と理論の往還する、意味のある学びになればと思います」
生徒たちからは、難しくて苦しかったけど達成感があった、自分がこんなにできると思わなかったと次の自信につながるような振り返りも多くあるのだそうです。反省点なども活かしながら、様々な経験を重ねていきます。
現地とものづくりでつながる、
「国際協力プロジェクト」
高2で取り組むのは、聖徳のSTEAM教育の集大成として、これまでの知識や経験、技術を総動員した「国際協力プロジェクト」です。
木村先生:「もっと広い世界や社会に対して、自分たちのものづくりでどんな貢献ができるのかを考え、実行に移すのが高2でのプロジェクトです」
『日本にいながら出来る国際協力』をテーマとし、1学期はこれまで長らく関係性を培っているインドとルワンダ両国の様々な課題に取り組んでいます。やはりプロトタイプを作り、アクションを行うところまでを大切にしています。例えば昨年は、ペットボトルに装着することで手を洗いやすいアダプタづくりを考えた生徒や、今年は100均で購入した身近な素材でおむつ作りに挑戦した生徒などアプローチは様々。
木村先生:「アダプタを作った生徒はデータが出力されない、うまく装着できないなど、たくさん失敗しながらもトライアンドエラーを重ねていました。ルワンダに3Dプリンタがあるので、データを送って使っていただきましたが、自分のものづくりが社会に貢献できるという実感を持てるような授業を構築していきたいと考えています」
2学期以降は自身で好きな国や地域を選択して、ものづくりを通した社会課題に取り組みますが、この「国際協力プロジェクト」をもっと突き詰めたいと課題活動の「国際交流ボランティア」として、主体的に取り組んでいる生徒たちもいます。
授業の枠から飛び出して
やりたいことに突き進む課外活動
これらSTEAM教育での学びが人生に影響を与えたという生徒も少なくありません。
川合先生:「中1でクレイアニメーションを作り続けた卒業生は、現在多摩美術大学で学んでいます。彼は在校中にTOHOシネマズ学生映画祭で『TOHO animation賞』を受賞したり、ソニーイメージングギャラリーの一般公募部門にて最年少で入賞したり、個展を行ったりと功績を残してくれました。ここまで打ち込めるものと出合ってくれたこと自体、教員冥利につきますが、授業がきっかけでアウトプットする楽しさや重要性に気づいてくれたことや学校に来たくなる原動力にも結び付いたことがうれしいですね。
STEAM教育を通じて他の教科への興味関心につながる可能性も秘めているので、私たちもどんどん橋渡しをしていきたいと考えています」
なお、この卒業生は『聖徳映画祭』で審査員として学校へ戻ってくるなど、同校のSTEAM教育の結晶といった存在です。
川合先生が顧問を務める動画研究部に入りたいと入学する生徒も増えています。学校行事などでも貢献するだけでなく、国内外の動画コンテストでの受賞経験を豊富に持ち、活躍の場を広げています。
また、同校では中1の春に新潟県・阿賀町でスプリングキャンプを実施していますが、同町との縁をより深く感じ、課外活動として「地域おこしプロジェクト」に取り組む生徒たちもいます。
木村先生:「阿賀町は深刻な少子高齢化など多くの問題を抱えていますが、課題解決に向けて生徒たちが様々な提案を行っています。この度、阿賀町と本校でパートナーシップ協定を締結しました」
この「地域おこしプロジェクト」の守備範囲は広く、学校所在地である武蔵境でも、地元産の唐辛子の植え付けやマルシェでの販売など、生徒たちは熱心に活動しています。
段階を踏みながら学んできたことの一つひとつが線としてつながる聖徳学園のSTEAM教育。
なお、過去の映像作品は学校説明会などで上映されますし、ボードゲームなどの作品にも触れられる予定です。ぜひ学校を訪れ、生徒たちの努力の成果と高い創造性をご覧ください。
