学校特集
女子聖学院中学校・高等学校2026
掲載日:2026年8月28日(金)
JR山手線駒込駅から徒歩7分。落ち着いた住宅街の中にある女子聖学院は、1905年の創立以来、キリスト教教育と女子教育を柱に「自らの賜物を用いて他者と共に歩むことのできる女性」を育んできました。生徒たちは毎朝の礼拝で聖書の言葉と向き合いながら、「自分はどうありたいのか」「学んだ知識を何のために用いるか」を考え続け、自ら進路を切り拓いています。
女子聖学院の学びは、一貫して「何のために勉強するのか」を考え続ける内容です。2026年度、校長へ就任した塚原隆行先生に、同校の教育方針や、英語教育の一つ「英検マイルストーン2026」と「スカラシップ英語資格利用入試」、さらに生徒の知的好奇心を育むサイエンス教育について伺いました。
役割が違うだけで、命の価値はみんな同じ
■一人ひとりが神からかけがえのない賜物を与えられている
2026年度、校長に就任した塚原隆行先生。さっそく理想とする校長像について尋ねると、「校長に就任しましたけど、いつでも一教員に戻れるようでなければならないと思っています」と謙虚な思いを語ってくださいました。
「なぜなら、命に優劣はないからです。命の価値は、みんな同じ。たまたま私は校長という役割を担っていますが、生徒も保護者も私たち教員も、役割が違うだけなんです」
この考えは、塚原校長先生だけではなく、女子聖学院の教員に広く共有されているものだといいます。
さらに教育観について尋ねると、「一人ひとりが神からかけがえのない賜物を与えられている」という考えが、女子聖学院の教育の根底にあると話してくださいました。
「これは聖書の『わたしの目には、あなたは高価で尊い。』という教えから育まれた考えです。人は神様の作品である。だから、『わたし』である神の目には、人間一人ひとりが尊く映るのです」
学校に息づいているのは、一人ひとりが持つ固有の賜物を見つけ、その賜物を生かす道をともに模索する教育です。生徒たちは、そうした日々の積み重ねの中で、自分らしく人生を歩むための土台となる力を育んでいきます。
「先日、オペラ歌手として活動しながら本校で非常勤講師を務めた卒業生が、ヨーロッパへ旅立ちました。彼女は在学中の学校生活を振り返り、『人生の土台となる力をここで授かった』と振り返ってくれたのです」
彼女は、こう続けたそうです。
「英語をはじめとする語学力、オペラに通じる西洋史の教養、多様な個性を持つ人と協力し、一つの作品をつくり上げるコミュニケーション力――。こうした力はすべて女子聖学院で培われました」
塚原校長先生は、そのときの様子をうれしそうに振り返ります。
「母校での学びを、このような言葉で語ってくれる卒業生の存在は、私たちにとって何よりの財産です。生徒一人ひとりが卒業するとき、『女子聖学院で学んでよかった』『ここで人生の土台となる力を育むことができた』と感じられるよう、これからも一人ひとりに寄り添いながら教育を続けていきたいと考えています」
世界と渡り合える確かな語学力を育む
■英検マイルストーン2026
海外でキャリアを築く卒業生や、外資系企業をはじめ幅広い分野で力を発揮する卒業生を数多く送り出している女子聖学院。その根幹を支える英語教育は、「語るべき言葉を持ち、それを英語で表現できる力を養うこと」を目的としています。
10年前からは英検(実用英語技能検定)の取得を推進しており、中学生のうちに英検3級の"満点取得"を目標に掲げていました。高得点を目指すことで、その後の上位級にも通用する基礎力を養うためです。
しかし、近年の共通テストは英語の長文読解がより難しくなり、高校卒業時に身につけるべき水準が大きく引き上げられてきました。これにより、早い段階から計画的に英語力を積み上げる必要性が高まっています。
そこで、2026年度から始まったのが「英検マイルストーン2026」です。高3の1学期終了までに英検2級、既習者であれば英検準1級をそれぞれ良いスコアで取ることを目標に、到達すべき里程標を細かく設定しています。
「英検はもはや大学入試の一角を担っています。年内に行われる学校推薦型や総合型選抜、さらには一般選抜にも関与するものとなりました。難関大学や国際系の学部を志望する生徒にとって、英検準1級の取得は大きなアドバンテージになるでしょう」(塚原校長先生)
英検マイルストーン2026の内訳
中1 英検5級取得・4級挑戦
中2 英検4級取得・3級挑戦
中3 英検3級取得・準2級挑戦
■英検合格を支える地道な単語力の強化
英検取得の鍵を担うのは、単語力の強化です。年間で目標単語数を掲げることで、生徒たちに地道な努力を促します。
年間目標単語数
中1=1300語、中2=1200語、中3=1500語 計4000語
高1=1700語、高2=1900語 計8000語以上
1日およそ15個の単語を覚え、週に1度英検単語のテストを実施します。日々鍛錬を欠かさないことで「英検は努力次第で取得できる」という意識を育んでいきます。
■4つの英検対策講座
単語力の強化と合わせ、ライティングやスピーキングなどを重点的に伸ばす英検対策講座を4つ開講しています。
中1、中2必修の「英検BOOST」
1年のうちで最も合格率が高い冬の英検に向けて、英語力を整理し、定着させる集中講座です。
中3、高1必修の「英検CORE」
高2での英検2級取得を目標に、逆算して中3、高1の頃に必要な力を育てる週1コマ(水曜日の7時限目)の必修講座です。語彙の強化に加え、ライティングやスピーキングを重点的に学びます。
「英検PLUS」
英検3級、準2級、2級、準1級に対応し、自主学習では補いにくいライティングとスピーキングを強化します。
「英検SPIRAL」
中学文法と高校文法を扱うクラスを開講し、学年を越えて英検に必要な文法を学べます。上位級挑戦に必要となる先取り学習や学び直しに対応します。
■スカラシップ英語資格利用入試の始まり
英検マイルストーン2026の実施とあわせ、2026年入試で実施したのが2月4日午後の「スカラシップ英語資格利用入試」です。国語・算数2科の入試問題に、英検級に応じたみなし得点を加えた300点満点で合否を判定します。
この入試で入学した生徒は、ネイティブ講師による取り出し授業など、さまざまな特典を受けられます。
英検によるみなし得点
英検4級...70点/3級...80点/準2級...90点/2級以上...100点
入学後に受けられるさまざまな特典
・英語BRIDGE...ネイティブ講師による取り出し授業を、毎週2コマ実施(4級以上保持者)。
・英会話ACADEMIC...教科横断型オンライン英会話授業を週に1回1時間、放課後に開講します(3級以上保持者)。
・ターム・年間留学プログラム奨学金
・英語学習アドバイザー制度
「英会話ACADEMICでは、話す題材がアメリカの食文化など多岐にわたります。より豊かな対話にするために、社会科や理科など他教科の教員が、テーマに応じて背景知識を補います」(塚原校長先生)
■英語が苦手な生徒へのフォローアップ
一方で、英語に苦手意識を持つ生徒への支援も欠かしません。女子聖学院では、生徒一人ひとりの理解度に応じた支援を行う「学習室」を設けています。
ここでは、小テストや定期テストの結果をもとに選出した補講対象者のほか、自ら学び直したいと希望した生徒に対し、細かなフォローアップを各教科の担当教員が行います。
理系女子社員とのふれあいで、将来の選択肢を広げるサイエンス体験
■面白く感じられる仕掛けづくりを重視
女子聖学院が重視するもうひとつの学びが、サイエンス教育です。同校では、算数や数学に苦手意識を持つ生徒でも数学を身近に感じられるような工夫をしています。
その一つが、中1で行うトランプを使ったマイナスの概念を教える授業です。トランプの赤と黒をプラス・マイナスに見立て、ゲームを通して負の数の概念を体感的に学びます。
また、学びを定着させる取り組みもあります。生徒がそれぞれつける「授業の記録」は、週に1度教員に提出することで、授業内容を頭で整理し、不明点を共有することに役立っています。
「本校のサイエンス教育は、急ぎすぎないのが特徴です。中高一貫校では一般的に中学3年分の学びを中2までに履修することが多いですが、本校では約2年半をかけて学びます。
これは、高校、大学、そして社会へとステップアップしていくための土台をしっかり築くためです。人生は大学入試で終わるわけではありません。生涯にわたって学び続ける力を育むには、わからないことをそのままにせず、一つひとつ理解を積み重ねていくことが大切だと考えています」(塚原校長先生)
同校の学びに対する姿勢は、先日進路講演会に登壇した卒業生の言葉にも表れています。
外資系企業などで活躍する2人の卒業生は、それぞれ「今は英語を使う仕事に就いています」「仕事で数学が必要になり、学び直しています」と、偶然にも同じような話をしたそうです。その上で、生徒たちに「必要になった時に学び直すだけの体力の大切さ」を説きました。
社会に出てからも、新しい知識や技能を必要に応じて学び続ける。そんな卒業生たちの姿は、女子聖学院が大切に育んできた「学び続ける力」を体現しているようです。
「巣立った先で『この能力が必要だよ』と言われた時に、『はい、やってみます』と言えるしなやかさを育んでいきたいですね」(塚原校長先生)
■中2からは、将来につながる広い視野を獲得する体験を重視
中2になると、体験を重視したサイエンスの学びが増えます。
今年初めて導入する中2を対象にした『Girls Meet STEM』では、若手理系女子社員と交流する機会を設けています。理系分野の仕事に中学生の頃から触れることで、生徒たちの進路選択を広げていきます。
このほか、1970年から続く中2~高2の希望者が対象の「理科見学旅行」では、授業だけでは学べない「教科書の一歩先を体験する学習」を実施しています。この旅行をきっかけに理系への興味を深め、医療・生命科学系の学部のある北里大学へ進学するなど、理系進路の選択に役立っています。
2028年には中3で物理、化学、生物、地学の4分野で実験・フィールド枠を行う「自然科学探究」を新設予定。これまでに学んだ内容を実際に体験する機会を設けています。
■高校では、ゼミ形式で探究活動に取り組む
高1、高2では、学年の壁を取り払った総合探究ゼミが開かれ、16のゼミに分かれて探究活動を週に1時間実施します。ゼミには、算数・数学の自由研究作品コンクール(MATHコン)を目指す「MATHコンゼミ」、生物の体構造を探究する「生き物観察ゼミ」、菜園を運営する「コミュニティーガーデンゼミ」などがあります。
「2017年から希望制で隣接する同法人の男子校・聖学院中高と連携して行うPBL型プログラム『DX・GX/SXプロジェクト』も特徴的です。放課後に行うプロジェクト学習で、人数は両校合わせて40~50人ほど。単年度で参加するほか、中学生の頃からほとんど参加する生徒もいます」(塚原校長先生)
2024年からはプログラミングや3Dモデリングを学ぶなど、ICT活用を実施。ロボット大会の「ロボッチャ」やサイエンスアゴラなどの外部大会に参加することもあります。
PBL型プログラムでコンポスト活動に参加した生徒は、大学入試の自己アピールに活用し、総合型選抜入試で千葉大学の園芸学部に進学しました。知的好奇心を深めた経験が、結果として進路や将来の夢につながっています。
女子聖学院らしさは、生徒たちの人への信頼感
最後に、塚原校長先生に女子聖学院らしさを尋ねると、「一言で表すのは難しいですね。ほかの教員に語らせたら、3日はかかりそうです」と微笑みを浮かべました。それからじっくりと考えた末に挙げたのは、「生徒たちの心根の良さ」でした。
「元気いっぱいの生徒も静かな生徒もいますが、根っこのところで人への信頼感がある方が多いです。私たちは生徒たちの前に教員という立場で現れ『今日の狙いはここですよ』と話しますけど、それに真っすぐに向き合おうとする姿勢には、人に対する信頼感を感じます。これは、教えられるものではありません。家庭で育まれた関係性の現れだと感じています」
一方で、塚原校長先生が課題として挙げるのは、生徒たちの慎ましさです。
「女子聖学院の生徒たちは、偏差値だけで進学先を選ぼうとしません。自分がやりたいこと、それを達成するためにはどんな進路が必要なのかをよく考えて選びます。
偏差値などの数字だけで進路を選ぶと、ミスマッチが起こりかねません。もちろん、偏差値が高い大学を目指すこと自体は決して悪いことではありませんが、世間から見ると『欲がない学校』と映るかもしれません。それでも私たちは、その姿勢こそが生徒たちの未来につながると信じています。だからこそ、さまざまな体験を重ねながら、自分自身で納得のいく進路を選べるよう、一人ひとりに寄り添っていきたいのです」
「あなたはどうしたいですか」
女子聖学院が何よりも大切にしている、この問いかけ。英語教育やサイエンス教育を通して育もうとしているのは、知識や技能だけではなく、自ら問い、学び続ける姿勢です。
悩み、壁にぶつかりながら、「私は何が好きなのか」「学んだことを何のために生かしたいのか」と自分に問い続ける。その積み重ねが、生徒一人ひとりの自分らしい進路を育み、人生を切り拓く力へとつながっていきます。
