学校特集
東京家政大学附属女子中学校・高等学校2026
掲載日:2026年6月20日(土)
1881年、女子教育の機会が限られた時代に学びの機会を作るため創立された東京家政大学。その教育の歩みと歴史を受け継ぎ、中学校・高等学校は80年にわたり、建学の精神「自主自律」と生活信条「愛情・勤勉・聡明」のもと、一人ひとりを大切にする教育を実践してきました。2025年度からは、「未来の私」を描く力を育てるための新教育プログラムを実施。生徒たちが主体的に挑戦する力を養っています。
2026年度、中学校・高等学校の校長に就任した荒籾和成先生に、学校方針と新教育プログラムの成果について伺います。
生活信条「愛情・勤勉・聡明」が作り出す温かな校風
校内に足を踏み入れると、生徒と教員の双方から、温かな校風と思いやりに満ちた雰囲気が感じられる東京家政大学附属女子。そんな同校で中学校・高校の校長に就任したのが荒籾和成先生です。35年間、東京家政大学附属女子で勤務してきました。
「最初は高校の英語教師として、その後は中学校の英語教師として教壇に立ちました。入試広報などを経験し、昨年度までは教頭を務めました」
校長就任にあたり、戦後に学長を務めた教育心理学者・青木誠四郎氏の書籍『若い女性(ひと)』(青木誠四郎著、若い女性刊行会)を読み直したそう。同書は、青木氏が全学年を対象に講演した記録集です。
「青木先生は、建学の精神『自主自律』につながる生活信条『愛情・勤勉・聡明』を提唱された方です。読み返すうちに、本校にとって『愛情』がとりわけ大切なのではないかと感じるようになりました」
愛情は思いやりややさしさを意味しますが、同校では「他者を重んじ、その人の尊厳を大切にする姿勢」を指します。青木氏は、「愛情を心にとどめているだけでは十分ではない」として、言葉や行動として現すことの大切さを説いたそう。
「青木先生の思いは、今も本校に受け継がれています。本校では、新入生が困っていると、上級生が自然に声をかける姿をよく見かけます。当たり前のやさしさですが、それも愛情を行動に移したひとつの在り方です。小さな行いが、学校の雰囲気を作っていくのです」
行動に移すためには、確かな判断ができる「聡明さ」と、持続するための「勤勉さ」が必要です。生活信条の「愛情・勤勉・聡明」は、つながっているのです。
「本校の温かな校風は、まず愛情を大切にする土台があったからこそ育まれてきたのだと、改めて感じています。今後も、互いを尊重し合い、思いやる姿勢を大切にする学校であり続けたいと思います」
世界とつながるための考え方を培う「GCP」
温かな校風を大切にする一方で、荒籾先生はこれからの学校づくりにおいて「居心地がいいからこそ、外へ出ていく力を強めていきたい」と意欲的に語ります。
「本校の生徒は、その優しい性格から相手の意見に同調しやすい面があります。しかし、生徒たちが社会へ羽ばたく頃には、自分の意見をしっかりと話し、互いの意見を認め合う力が必要となるでしょう」
そこで昨年度より「グローバル・コンピテンス・プログラム(GCP)」を導入し、教科横断型の学び「Creative Learning」とともに展開しています。これらは、「未来の私を描く」をキーワードに、生徒一人ひとりが自分らしい未来を描く力を育む取り組みです。
GCPは、OECD(経済協力開発機構)が提唱するグローバル・コンピテンシーの概念に基づき開発された、世界とつながる力を育むためのプログラム。週1時間、中1~高1の生徒を対象に、外国人講師と日本人教員によるチームティーチングで、「自己理解」「他者理解」「世界とのつながり」を体系的に学んでいきます。
「GCPでは、まず自分を深く理解することから始まります。そこから他者理解を通して、文化や習慣、考え方の違いを知り、多様な価値観を尊重することを学びます」
例えばユニットの中では、「食べたことのない料理を試すのは好き?」という問いに、「OK」「チャレンジできる」「パニックになってしまう」の3択で答える活動があります。こうした問いを通して、自分が新しいことに対してどのように感じるかを知り、自分自身への理解を深めていきます。また別の活動では、生徒同士で意見を交わし、自分と相手が感じた性格を組み合わせたエンブレム制作にも取り組みます。
「活動を通して、自分では気づかなかった特徴が見えてくることもあります。例えば『ユニークさが少し欠けているかもしれない』と感じたら、そのマインドをどう変えるか。意見を交換することでさまざまな解釈を取り入れ、自分という存在を見直していきます」
中3に実施したアンケート調査では、前向きな変化が見られました。
GCPに関するアンケート結果(中3)
・人として成長できた...73%
・多様性や異文化への意識が高まった...69%
・授業で積極的に関わる、協働に関して自信が付いた...74%
生徒からは、「考え方が変わった」「以前は自分の価値観でしか測れなかったが、違う意見を少しずつ認められるようになった」「いろんな人と話すことで、たくさんの考え方を知ることができた」「人に伝えるためにはどうしたらいいか、考えるようになった」などの意見が上がります。
何より、荒籾先生は「話し合いの場で、生徒同士の意見交換が活発になってきた」と変化を実感している様子です。このほか、GCPの効果として、高1で行うオーストラリア・ニュージーランドのターム留学に自ら挑戦したいと考える生徒が増えてきたことも挙げられます。
「ターム留学はホームステイしながら現地校へ約10週間通うプログラムです。長期間の留学は、生徒にとって大きな挑戦。自分の殻を破ろうとする意識の表れだと感じています」
自分を知り、互いの考えをやり取りして形にする。この流れは、同校が長く続けるキャリア教育「ヴァンサンカン・プラン」の考え方にも通じています。ヴァンサンカン・プランは「25歳の理想の私」を目標に、「自己理解」「社会理解」「目標進路の設定」を深めていく取り組み。自分自身の生き方やキャリアだけでなく、将来の人生設計にも目を向けながら、10代の頃から「自分はどう生きたいか」を主体的に考えていくのです。
「チャレンジして失敗したら、また頑張ればいい。そう思える環境を育んでいきます」
ピザ作りから始まる"教科横断型"の学び
もう一つの柱が、教科横断型の学び「Creative Learning」です。ひとつのテーマを複数の教科で扱うことで、学びを一つの体験として結びつけていきます。2025年度は中2がピザ作り、中3の希望者が木をテーマに、オリジナル木製チャーム作りに挑戦しました。
ピザ作りでは、国語の授業でピザのターゲット層とコンセプトを決めてキャッチフレーズを考案し、美術でピザ屋のシンボルマークを作成。数学ではピザ店経営に関する利益計算を行うなど、実生活につながる学びに触れたそう。
「印象的だったのが、理科の授業です。ピザに使う酵母をレーズンと水と砂糖から作りました。生徒たちには、酵母が育っていく姿が興味深かったようです。毎日蓋を開けてかき混ぜる必要があるのですが、瓶がパンパンになってなかなか開けられないグループもありました。情報としての知識ではなく、生きた体験として教科の学びが得られたと思います」
完成したピザは、校内にある東京家政大学造形表現学科のピザ窯で、大学教授の協力を得て焼き上げます。大学施設や教授と関わる機会は、生徒たちにとって大きな刺激になります。
「教科横断型授業に加え、校外学習や行事などさまざまな体験を通して、生徒たちは協働して学び、自分自身で考えて、形にする力を育んでいきます。そうした経験の積み重ねが自分らしい未来へとつながっていくのだと思います」
多様な進路に応えるコース制
生徒一人ひとりが多様な進路を描けるよう、昨年度から高校のカリキュラムを一新し、新コース制を導入しました。また、中学校ではクラス名称を「Advanced(特進クラス)」と「Standard(進学クラス)」に改めています。
高校では、国公立大学や難関私立大学、海外大学を目指す「Super Advancedコース」と、多様な進路に対応する「Creative Learningコース」に分かれます。
「Super Advancedコース」では、文系で数学Ⅱ・B、理系で理科2科目を必修化するなど、国公立大の受験に対応できるカリキュラムを構成。このほか、大学受験につながる特別な講座を実施します。
例えば、高1の春休みに行う「スプリングキャンプ」では、自学自習のほか、特別プログラムを開講し、国公立大学に合格したOGに話を聞く機会を設けています。昨年度は、横浜国立大学へ進学した卒業生から話を聞きました。ほかにも、あえて大学の図書館で自習する時間を設定し、生徒たちが知的な刺激を受けられる環境をつくっています。
「2026年の大学合格実績では、お茶の水女子大学を含む国公立大学への合格者が5人と、本校として過去最多の実績となりました。本人の努力が一番ですが、教員が生徒一人ひとりの進路に寄り添いながら関わった成果が現れたと感じています」
「Creative Learningコース」では、難関私立大学や海外大学を目指す「CA(特別進学)クラス」と、東京家政大学の内部推薦を中心とした進路を目指す「TKU(内部進学)クラス」に分かれます。
「中高大連携を強化し、中3からは大学教授の講義を受けるプログラムも実施しています。東京家政大学への進学を意識している生徒は、より目標を明確にできるでしょう。実際、2026年度の東京家政大学への内部進学者も増加しました。これも自分に合った進路を思い描けた成果だと考えています」
昨年度からは東京家政大学への内部推薦枠が拡充しました。また、他大学を志望する生徒も一定の基準を満たせば、同大学への推薦を保持したまま併願受験が可能です。
「世の中の状況に合わせて、東京家政大学では文化情報学環と社会デザイン学環など、新しい学びが誕生し、進化を続けています。本校では、生徒たちが自分の将来をしっかりと考えられる環境を整えています」
卒業後も帰ってきたくなる学び舎
最後に、荒籾先生は同校の魅力を、校内のビオトープに育つニリンソウに例えて語ってくれました。
「ニリンソウは春に白い花を咲かせるかわいらしい植物で、名前の通り、ひとつの茎から二輪の花をつけます。その寄り添うような姿から友情や協力といった花言葉があるのですが、この花は必ず二輪で咲くわけではありません。一輪だけや、三輪四輪と咲くものもあるんです。そしてニリンソウは、土の中で根茎がつながりながら育つ花でもあります。それぞれ違いがありながらも、見えないところでつながり支え合う姿は、本校が大切にしている人と人との関わり方にも重なるように感じています」
生徒一人ひとりの意志を尊重しながら、人と人のつながりを大切にしている。そんな温かな学び舎には、卒業後も足を運ぶ卒業生が多いそうです。先日は、高校を卒業して30年を記念した学年同窓会を開いたそう。100人近くが集まり、「夢のような時間」とまるで高校生に戻ったかのように語り合う姿が見られました。
「まずは一度学校に来ていただき、本校の雰囲気を感じてほしいですね」
同校では、学校説明会の他にも、受験生向けのオープンスクールや、在校生の授業が見られるミニ学校説明会などを実施。荒籾先生は、「ランチ体験もあるので、ぜひ参加してみて」と声をかけます。
「スクールランチは、本校が力を入れる取り組みのひとつ。生徒の成長に直接つながるだけでなく、安心して過ごせる環境づくりの一翼を担っています」
中学受験では、多様な受験方法を準備しています。2科・4科入試のほか、適性検査型入試、英検利用プラス1科セレクト入試などを実施しています。
「受験生にとって、私立中学受験は大きな挑戦のひとつです。そうして出会った学校は、やがて大切なホームになります。安心できる居場所があるからこそ、人はまた新しいことへ挑戦できる。その積み重ねが、未来へとつながっていくのです。
受験生に向けては、入試チャレンジ講座や冬休みの個別相談、入試直前アドバイスも実施しています。安心して何でも質問してください」
ニリンソウが寄り添って咲くように、生徒一人ひとりが自分らしく成長し、互いに支え合いながら育つ東京家政大学附属女子。そんな温かなつながりが、卒業後も帰ってきたくなる理由なのかもしれません。
