学校特集
国学院大学久我山中学高等学校2026
掲載日:2026年9月4日(金)
国学院大学久我山中学高等学校では、「本物に出会う体験」を理系教育の出発点に据えています。中学段階での豊富な観察・実験を通して興味や探究心を育み、考察や自由研究を通じて自ら問いを深める力を養う。さらに、高大連携や男女別学ならではの進路指導を通して、一人ひとりが将来を主体的に選び取る力へとつなげています。今回は、理科主任の井上俊之先生、進路指導部長の西山剛宏先生、進路指導部(女子部)主任の村上友加里先生に、理系教育の原点から杏林大学・東京理科大学との高大連携、そして理系教育を通じて同校が目指す人材像まで伺いました。
本物に出会い、触れることで
理科そのものへの興味関心を育む
国学院大学久我山中学高等学校の理系教育は、「まず理科そのものに興味を持つこと」から始まります。知識を詰め込むのではなく、本物に触れ、驚きや発見を重ねながら、「もっと知りたい」という気持ちを育てることを大切にしています。
同校の理科主任を務める井上俊之先生は、その思いをこう語ります。
「そもそも、理科は興味を持つところから学びが始まると思っています。そのため、中学の段階では特に観察や実験を多く取り入れたいという気持ちで組み立ています」
例えば生物では、校内を歩きながら葉の形や色などを手がかりに植物の名前を調べたり、シダ植物を探したりするフィールドワークを実施。化学では、ドライアイスの中でマグネシウムを燃焼させるなど、教科書で学んだ化学反応を実際に自分の目で確かめる実験を行っています。地学では岩石を割って化石を探す「化石発掘実験」、物理ではフラスコの中に真空を作り、その中で鈴の音が鳴るかどうかを調べる「真空鈴の実験」などを行うことによって、五感を使って自然や科学に触れる授業が展開されています。
実際の自然や研究現場に触れる学びは、教室の外にも広がっています。希望者を対象とした「くがラボ(Kugayama Science Lab)」では「液体窒素のマジックショー!」など、同校理科教員の専門を生かした実験研究活動を開催。東京学芸大学の理科教育系サークルとのコラボレーション企画などの特別実験講座のほか、校外での特別講座「理科巡検」も人気プログラムの一つです。富士山周辺での植生調査や火山の観察、JAXAの見学、南極・昭和基地とのオンライン交流などを実施。昨年度より三浦半島での磯の生物観察会も追加され、科学への興味や探究心をさらに深めています。
こうした理系教育は、この5年ほどでさらに発展してきました。背景にあるのは、「自立した探究者を育てる」という同校の理科における共通の教育目標です。
井上先生は、「以前は実験をやること自体に重点を置いていましたが、ここ5年ほどで、『実験を通して何を考えるか』、『どうすれば学びを深められるか』を大切にする方向へ変わってきました」と振り返ります。
さまざまな体験を通じて芽生えた科学への関心を、次の学びへとつなげていく。それが同校の理系教育の大きな特徴なのだと感じました。
「興味」を「探究」へ――考察を重ねる理系教育
生徒の興味を「探究」へと発展させるため、同校では実験後の考察やレポート作成を重視しています。井上先生は、そのねらいについて次のように話します。
「コンテストで入賞するような作品は、やはり考察のレベルが高いんです。結果をどう分析して考察するかという部分は、生徒任せではなかなか身につきません。だからこそ、学校できちんと指導していく必要があると考えています」
その集大成となるのが、中3生全員が取り組む自由研究です。同校では、研究テーマを深く掘り下げるだけでなく、その過程で必要となるデータのまとめ方や考察の進め方、ICTツールの活用方法も3年間をかけて段階的に学んでいきます。
例えば中1ではレポートのPDF化、中2ではスプレッドシートを使ったデータ整理やグラフ作成を学習。実験では写真撮影やデータの分析にも日常的に取り組み、その積み重ねを経て、中3では自ら設定したテーマについて、考察を含めた研究としてまとめ上げていきます。
こうした「考察を深める学び」を実現するため、授業のあり方そのものも見直されてきました。以前はおよそ100種類の実験を行い、多くの経験を積ませることを重視していましたが、現在は実験数を約50種類に精選。通常の実験でも考察まで含めて約2コマ、重点的なテーマではレポート作成にさらに2〜3時間をかけるなど、一つひとつの学びを深める授業へと進化しています。
井上先生は、「実験がおもしろかったと言ってもらえることが増え、それをきっかけに理系へ進む生徒もいます」と話します。観察や実験で芽生えた興味を、「なぜそうなるのか」と考え、自分の言葉でまとめていく。その積み重ねが、同校の理系教育の核となる探究する力を育んでいるのでしょう。
探究の先にある未来へ。
高大連携が広げる理系進路の可能性
理系教育のなかで芽生えた「もっと知りたい」という思いを、大学での専門的な学びへとつなげる取り組みが、杏林大学・東京理科大学との高大連携です。進路指導部長の西山剛宏先生は、高大連携の意義について、「大学進学の先にある学びや将来を具体的にイメージする機会になっている」と話します。
杏林大学との高大連携では、2026年度に医学部生によるポスターセッションへ希望生徒が参加。研究内容だけでなく、大学生活や進路について直接話を聞く機会も設けられました。同校の卒業生も参加し、身近な先輩との交流が生徒たちにとって大きな刺激になったそうです。
また、杏林大学の協定校向けに実施されている「ブリッジ授業」にも参加。リハビリテーションや作業療法、臨床工学などを志望する生徒が大学での学びを体験し、進路への理解を深めています。
一方、2024年に高大連携協定を締結した東京理科大学との交流も本格化しています。今年度実施されたキャンパス訪問には、中3から高2まで約100名の希望者が集まり、抽選になるほどの人気だったそうです。当日は研究施設の見学に加え、同校の卒業生との座談会も実施され、大学での学びや研究をより身近に感じる機会となりました。
座談会では、卒業生から「科目が得意だから、苦手だからで進路を決めるのではなく、自分が本当にやりたいことを大切にしてほしい」というメッセージも寄せられました。実際に大学で学ぶ先輩の言葉は、生徒たちが自身の進路を考えるうえで、大きな刺激になったといいます。
今後は工学や建築、情報など、さらに幅広い理系分野での高大連携も検討しているといいます。大学との連携は、進学先を知るためだけの取り組みではありません。大学で学ぶ意味や、その先の社会とのつながりを考える経験こそが、生徒一人ひとりの主体的な進路選択につながっているのでしょう。
高大連携によって大学での専門的な学びに触れる機会を設ける一方で、同校では、その学びを将来の選択につなげるためのキャリア教育にも力を入れています。理系・文系を問わず、自分が何に興味を持ち、どのような未来を描きたいのかを考えることが、主体的な進路選択の第一歩になると考えているからです。
女子部の進路指導を担当する進路指導部(女子部)主任の村上友加里先生は、そのねらいをこう話します。
「大学受験から逆算して進路を考えるのは、中学生にはまだ難しい部分があります。だからこそ、『どんな仕事がしたいのか』『どんな人生を送りたいのか』という職業観から考えていくことを大切にしています」
女子部では、中2から「働くこと」をテーマにしたキャリア教育が始まります。企業や大学などを訪問し、実際に働く人から話を聞く機会を設けています。近年は國學院大學を訪問し、大学職員の仕事や大学運営への理解を深めました。中3になると、生徒自身が興味を持った企業へ電話でアポイントを取り、職場体験に臨みます。
「最初は電話をかけること自体に戸惑う生徒も多いんです」と村上先生。それでも、断られる経験や失敗を重ねながら、自分で次の行動を考え、再び挑戦する。その積み重ねが、生徒たちの成長につながっているといいます。
一方、男子部では、「みらい講座」をはじめとするキャリア教育を実施しています。企業で活躍する社会人を招き、仕事への思いやキャリアについて話を聞くほか、中3では身近な大人の仕事を取材し、学年全体で一冊の冊子にまとめる課題にも取り組みます。
西山先生は、「保護者の仕事について改めて話を聞くことで、『そんな仕事をしていたんだ』と初めて知る生徒も少なくありません」と話します。仕事への理解を深めるだけでなく、家族と将来について話し合うきっかけにもなっているそうです。
こうしたキャリア教育は、高校で迎える文理選択にもつながっています。村上先生は、「文理選択に向けたアプローチは男女共通です」としたうえで、「科目の得意・不得意だけで進路を決めるのではなく、自分がどんなことに興味を持ち、どんな仕事に就きたいのかという視点を大切にしています」と話します。
理系進学も、「理科や数学が得意だから」という理由だけで選ぶものではありません。将来どのような分野で社会に貢献したいのか、そのためにはどのような学びが必要なのか――。高大連携で大学の学びに触れ、キャリア教育を通して社会を知ることで、生徒たちは自分自身の進路と向き合っていきます。そうした積み重ねが、一人ひとりが納得感を持って未来を選び取る力につながっているのだと実感しました。
探究心を進路実現へ。
高校段階で続く理系学習のサポート
中学で育んだ探究心や、高大連携を通じて描いた将来像。その学びを大学受験、そして進路実現へとつなげるため、同校では高校段階でも一人ひとりに寄り添った学習支援を行っています。その一つが、希望者向けの添削指導です。
井上先生は、化学の演習で行っている取り組みを紹介してくれました。
「例えば化学なら、100問の演習プリントを用意しています。生徒が解いて提出すると、途中式まで確認しながら『ここはこう考えるといいよ』とコメントを書いて返します。途中の考え方を見る機会は意外と少ないので、添削はとても有効な指導だと考えています」
また、同校ならではの伝統的な取り組みが、高3生を対象とした「御岳合宿講習」です。もともとは、理系進学を目指す生徒たちを学校としてさらに後押ししたいという教員たちの思いから始まりました。現在も、多くの理系志望者が参加しています。
西山先生は、「男女別学だからこそ、お互いの学ぶ姿勢から刺激を受けられることもあります」と話します。普段は別々に学ぶ生徒たちが、同じ目標に向かって切磋琢磨する時間は、学力向上だけでなく、受験へのモチベーションを高める貴重な機会にもなっているようです。
日々の添削指導で基礎を積み重ね、仲間と切磋琢磨しながら受験に挑む。中学で芽生えた探究心を最後まで育み続けるための手厚いサポート体制も、同校の理系教育を支える大きな強みだといえます。
「自分らしく生きる力」を育てる
──理系教育のその先にあるもの
最後に先生方へ、理系教育を通してどのような生徒に育ってほしいと考えているのかを伺いました。
井上先生は、変化の激しい時代だからこそ、「自分らしく生きる力」の大切さを強調します。
「生成AIをはじめ、1年後には今は想像もしていない技術が生まれているかもしれません。そんな時代だからこそ、不測の事態にも柔軟に対応できる力を身につけてほしいと思います」
そのために必要なのは、知識を覚えることだけではありません。井上先生はこう続けます。
「人間にしかできないことは、人と人とがつながりながら協力し、自分なりのアイデアを生み出していくことです。教科書に書かれている事柄を覚えるだけでは、その力は育ちません。だからこそ本校では、『本物に出会う』体験を大切にし、観察や実験、考察を通して、生徒自身が問いを立て、考える力を育んでいます」
西山先生は、理系分野の特徴に触れ、「専門が細分化されているからこそ、人とのつながりを大切にしてほしい」と話します。
「一人では解決できないことも多い分野ですから、周囲と協力しながら新たな知識や考えを取り入れていく力が必要です。社会に出てからも、学び続けながら成長していける人になってほしいと思っています」
また、村上先生は、失敗を恐れず、そこから学びを得る姿勢の大切さを語ります。
「失敗したら終わりではなく、『何がうまくいかなかったのか』を振り返り、次につなげる力を育ててほしいですね」
そして、女子部の進路指導という立場からも、「特に女性は人生を重ねるにつれて、いろいろな選択を迫られる場面が多いと思います。そのときに選択肢を狭めないよう、身近な話として伝えていきたい」と、キャリアと人生設計の両面を見据えた指導への思いを伝えてくださいました。
先生方のお話に共通していたのは、理系・文系という枠を超え、自ら問いを立て、学び続ける力を育てたいという思いでした。「本物に出会う」体験から始まり、探究、高大連携、進路指導へとつながる同校の学びは、変化の激しい時代のなかでも、自分自身の可能性を広げ、未来を選択する力を育むものなのだと感じました。
ぜひ国学院大学久我山中学高等学校を訪れ、未来を切り拓く理系教育の現場を、充実した教育環境も含めて実際に感じてみてください。
