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学校特集

麴町学園女子中学校高等学校2026

「みらい科」は、社会から必要とされる人を育てるための学び
教育効果を全体化するための改革がスタートして2年目。発芽の兆しが見え始めた数々のプログラムをご紹介

掲載日:2026年9月17日(木)

 創立から121年。「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性の育成」を教育ビジョンとし、教育の柱に「みらい科(探究学習)」「アクティブイングリッシュ」「アクティブサイエンス」を据えて独自の教育を展開する同校は、昨年度、大久保靖先生が校長に着任すると同時にダイナミックな改革に乗り出しました。教育効果を全体化するために中学のコース制を廃して共通クラスへと移行し、3つの教育の柱のアップデートにも着手。みんなが同じ授業を公平に受けるシステムに変更したのです。ここでは改革の全体像と、「みらい科」の取り組みにフォーカスしてご紹介します。大久保校長と、中2学年主任で全学年の「みらい科」を牽引する飯泉恵梨子先生に伺いました。

コース制を廃し、次代を見据えてカリキュラムを再構築

■共通クラスの多様な人間関係の中で、教育効果の全体化を狙う

 中学のコース制撤廃の理由は、次の2点になります。
 ❶入試段階から進路のイメージを狭めない。
 ❷授業内容をアップデートし、全員が同じ授業を受けて学び合うことで教育効果を全体化させる。
 使える英語を体得する活動型英語学習「アクティブイングリッシュ」や、能動的に科学する「アクティブサイエンス」などは同校を代表するプログラムです。ちなみに「アクティブイングリッシュ」は、英語教育に定評のある同校の代名詞でもあります。
 以前はコースによって、英語と理科の学習量や学びの深さが若干異なりましたが、さほど大きな違いはなかったため、共通クラスにして「すべての生徒に麴町学園女子の特色を存分に享受する機会を提供する」方向へと舵を切ったのです。中学では毎年クラス替えを行って出会いを創出し、幅広い人間関係の中で教育効果を全体化することが狙いです。

麹町女子_校長の大久保靖先生
校長の大久保靖先生

大久保校長:「次代を見据えて学校をさらに進化させていくためには、これまで本校が取り組んできた教育のあり方を検証し、今一度、取り組みの一つひとつを精査・統合することが必要と考えました。そこで昨年から各種委員会を立ち上げて過去の取り組みを見直し始め、本当に必要なものはきちんと残しつつ、カリキュラムをブラッシュアップしているところです」

麹町女子_オールイングリッシュが原則の「インターナショナルラウンジ」には、ネイティブの先生が常駐している
オールイングリッシュが原則の「インターナショナルラウンジ」には、ネイティブの先生が常駐している

「アクティブイングリッシュ」では4技能を着実に習得するほか、課題解決型の特別プログラムをスタート。年間15コマのオールイングリッシュによる探究型授業「グローバルコンピテンスプログラム」(詳細は後述)を「みらい科」と連携して新設しました。

 また、「アクティブサイエンス」では「なぜ?」を起点に仮説を立て、グループ活動を通して考察・実証していきますが、今年度からは本物に触れる機会をさらに増やすために、講演会や、ミニチュア火山噴火体験など実際に自分で作ってみるプログラムも実施しています。

麹町女子_創立者の大築佛郎は「科学の目を開くこと」を謳った。その意思は、今も確かに受け継がれている
創立者の大築佛郎は「科学の目を開くこと」を謳った。その意思は、今も確かに受け継がれている

大久保校長:「『公平』と『平等』という言葉がありますが、学校教育においては公平性を大切にしながら、状況に応じて適切に対応していかなければならないと思っています」

 校長の言う「公平」とは、言わば壁の向こう側の景色を見せるために各個人に合わせた踏み台を用意すること。一方の「平等」とは、背の高い人にも低い人にも同じ高さの踏み台を用意することを意味しています。

■女性としてのキャリアを見据えながら、「コンピテンス」を育てることが重要

「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性の育成」という教育ビジョンの中核を成すプログラムが、校外へも積極的に出ていくアクティブな探究的学び「みらい科」です。その要は、自分たちが学んだことを実際に社会に還元する「社会実装型探究」と言えます。
「みらい科」は、行動を伴った幅広い学びで課題設定力や論理的思考力、レジリエンス(困難を乗り越える力)など、未来を切り拓くための力を体系的に育て、生徒が自分で心のエンジンを回し、主体的に未来をデザインする力(エージェンシー)を引き出すことを目的としています。

麹町女子_「みらい科」を牽引する飯泉恵梨子先生
「みらい科」を牽引する飯泉恵梨子先生

飯泉先生:「私たち大人も経験したことのない次代に生徒たちを送り出すわけですから、自分で道を切り拓く力を身につけさせなければなりません。そのため、取り組みの過程で失敗しそうな要素があっても、本校ではあえて取り除かないようにしています。そうしないと、社会に出た時に打たれ弱い人になってしまいますから。困難にぶつかった時に、どういうふうに対応していくかという部分こそ、みらい科で育てなければいけない力だと思っています。つまり、何よりもコンピテンスを育てることが重要だと思うのです」

「コンピテンス」とは、課題に対して適切に対処できる能力の総称のことです。
 飯泉先生はこうも言います。「『人を育てる』学校教育の中で教員としての役割は何かと考えた時、何をやることが正解で、何をやらないことが不正解なのかわかりづらいものですが、そこを明確にしようと思いました。麴町学園としてどのような生徒を育てたいかといえば、『次代の社会で必要とされる人』だと。そのために、今自分は何をすべきかと考えることが重要です。そこが、みらい科のプログラムのリニューアルに繋りました」と。

麹町女子_「みらい科」での学びは自分の在り方、そして生き方の基盤をつくる
「みらい科」での学びは自分の在り方、そして生き方の基盤をつくる

飯泉先生:「また、みらい科は四半世紀前にキャリア教育として始まりましたが、その部分も残そうと思いました。本校は女子校ですので、生徒たちの将来のライフスタイルの変化も見据えなければなりません。例えば結婚や出産、子育てを選ぶのか選ばないのか。女性ならではの悩みにたびたび直面すると思うのですが、何かを選択しなければならない時に、この中高での学びが選択のヒントになればという思いで進めています」

 考えてみれば、学びのすべてがキャリア教育とも、探究とも言えるかもしれません。
 そして、まず第一段階の中1では「自分は何に興味かあるのか」を知ることから始め、さまざまなことを経験して探究する姿勢の土台づくりに充てています。

飯泉先生:「いろいろなことを経験する中で、何か一つでも引っ掛かってくれればいいなと。今、中1ではICTを中心に据えて、プログラミングの基礎を学んでいます。『AIが示す情報は必ずしも正しいとは限らない。嘘を見破ってみよう』とか、地図とさまざまな角度から撮った写真を用意して『この写真はこの地図のどこから撮ったの?』と考えさせるところから、少しずつプログラミングに移行しています。生徒からすれば、『プログラミングって言ったのに、どうしてこんなことするの?』と思っているかもしれませんが(笑)、楽しんでいる様子です」

「やらされ感」が生まれないように工夫する先生方には、普段の毎日の生活が勉強に繋がっていることを生徒に実感させ、何気ない「なぜ?」が探究の出発点になることを知ってほしいという狙いがあります。

飯泉先生:「私の専門は理科(化学)ですが、誰もが小さい頃は何に対しても『なぜ? どうして?』と好奇心旺盛だったはずです。でも、大人になるにつれてそのような疑問を持たなくなるのは、周りの大人たちが子どもの疑問を潰してしまったためかもしれないと思うのです。ですから、人に聞かなくても『なぜ?』の種を自分で拾うことで、先に繋がっていくんだということを伝えたいと思っています」

「みらい科」の最初の頃の授業で、飯泉先生は生徒たちにこう問いかけると言います。「社会で本当に必要とされる人は『勉強ができる』人だけですか?」と。「みんなに置き換えると、友達になりたいと思うのは勉強ができる人? スポーツの上手い人? それだけではないですよね。思いやりのある人、困ったことにすぐに気づいてくれる人と友達になりたいと思うのでは? 勉強ももちろん必要だけれど、人間性を磨くことは社会に出るうえで最も重要なことですよ」と。

麹町女子_グループワークは、どの教科でも頻繁に行われる
グループワークは、どの教科でも頻繁に行われる

 そこから、生徒たちは「協働すること」「コミュニケーションをとること」「ぶつかった時にはどう解消していくか」ということの大切さを、グループワークを通して学んでいくのです。また、グループワークでは普段から仲の良い生徒同士を組ませるのではなく、あえて考え方の違う生徒同士を組ませ、そこから一つのものを一緒に作り上げる経験をさせているといいます。そこには、理由がありました。

飯泉先生:「というのも、コロナ前とコロナ後では、生徒の質が変わったように感じるからです。その閉塞した、失われた時期に学ばなければならなかったこと、例えばケンカをして仲直りをして、また一緒に遊ぶという経験をほとんどしていないので、以前に比べて人間関係を構築する力が弱くなっているのです。ですから、みらい科の探究活動では個人作業も行いつつ、グループワークを通してその力を取り戻させたいのです。それは、仲間同士もそうですが、社会との関わりにおいても同様です」

 そして、昨年からは中3以降で実践的なゼミ活動も開始しています。自分の関心事を探りながら、さまざまな知識を得ていく中1・2の学びを経て、各種のゼミの中からそれぞれが自分の関心に合ったものを選んで、いよいよ実動に入るのです。

麹町女子_基礎力を固めたうえで、目指すのは「自走する学習者」!
基礎力を固めたうえで、目指すのは「自走する学習者」!

大久保校長:「1年間の前半は情報収集力やプレゼン力、ロジカルシンキングの手法など、探究の作法とも言うべきスキルを学びますが、学年を追うごとにレベルアップさせていきます。そして、後半では自分事にして立てた問いを検証するため、グループを組みゼミ形式で探究していきます。大まかに言いますと、STEAM探究、ソーシャルサイエンス探究、グローバル・ローカル探究、キャリア探究などの領域を設定してゼミを設け、最終的には社会課題と繋がる『社会実装型探究』へと発展させていきます」

■「みらい科」ゼミ活動テーマ

「STEAM」STEAM力の向上と多様性への理解を深める。
 →(例) ロボットプログラミング/3Dプリンターやレーザーカッターを活用したものづくり。
「地域と歴史」地域の歴史を学び、より良い未来の麴町を提案する。
 →(例)「麴町かるた」の作成を通じ、「昔」と「今」を比較・分析する。
「地域企業連携」社会の第一線で働く人々と協力し、実践的な探究を実施。
 →(例)書店の売り場づくりを通じ、麴町の周辺企業とビジネスの調査・研究を行う。
「社会実装」実社会の課題を見つめ、その解決に向けて探究活動を深める。また、企業とのコラボレーションによる製品開発から導入までを行う。
 →(例)レトルトカレーやクッキーの製品化など。

自分で生きていく力と、次代に活きる力を育てる

■「みらい科」が目指すのは、社会実装型探究で社会に参画すること

 ここで、昨年度の例も含めながら、みらい科での取り組みをご紹介しましょう。千代田区麹町という立地を活かして企業との連携も活発な同校ですが、それぞれの取り組みは、日々学んできたことが社会と直結していることを実感する機会になっています。そして生徒たちは、さまざまな壁にぶつかりながらも試行錯誤を重ね、奮闘しています。

●「書店プロデュース」を実施(中3)

麹町女子_生徒たちがプロデュースした特設コーナーがこちら
生徒たちがプロデュースした特設コーナーがこちら

 今年の1月、麻布台ヒルズ内にある大垣書店内に、同校の中3生がプロデュースする特設コーナーが設置されました。選書をして書評を書き、売り場デザインやPOP作成、売り上げ分析までを生徒が行う、1カ月間にわたる実践型プロジェクトです。

飯泉先生:「この取り組みでは、自分たちが良いと思ったものを周囲に勧めるわけですから、すべてのプロセスを『自分事にする』ことを主眼としています」

大久保校長:「大垣書店さんは、麻布台というおしゃれな街の中にあるおしゃれな書店です。私はそっと見に行ってみたのですが、バレンタインデーが近かったこともあり、手作りチョコレートのレシピ本などが並べられていました。でも、お客さんのほとんどはビジネスパーソンです。中学生の視点での選書であり、ドラッカーが言うところの『顧客の創造』には繋がっていませんでした」

 そこで、生徒たちは週ごとに共有される書店の売り上げデータをもとに、選書や売り場デザインを見直しました。「どこで」「どんなお客さんに」本を売るのかを再度考える。生徒たちにとっては、「ものを売る」という行為の難しさを実社会の中で実感する初めての体験となりました。
 この「書店プロデュース」は、今年度も継続されます。

●「パラスポーツ×テクノロジー」ロボッチャ®︎を実施(全学年)

麹町女子_STEAM教育の拠点となる「デジタルラボ」
STEAM教育の拠点となる「デジタルラボ」

 昨年からはみらい科にSTEAM教育も盛り込み、「ロボッチャ®」を各学年で実施しています。これは「ロボット・プログラミング×ボッチャ(パラスポーツ)」のことで、ロボットの設計やプログラミング、データ分析を組み合わせて課題解決に挑戦し、仲間との協働を通して思考力や探究力を育成するもの。多様な立場の人の視点から考え、お互いを理解することを学び、「自分はどのように社会貢献することができるのか」と考えるきっかけとしています。それに伴い、STEAM教育の拠点として3Dプリンターやレーザーカッターを備えた「デジタルラボ」も新たに設置しました。

麹町女子_高校生にもなると、どんどん成果を出し始める
高校生にもなると、どんどん成果を出し始める

大久保校長:「中1ではレゴ®ブロックで作成したロボットを操作することから始まりますが、高1ではどうすればよりロボッチャの精度を高められるか、試行錯誤を繰り返しながらエンジニアリング的発想を得る過程を学んでいきます。5月に開催された『ロボッチャ®チャンピオンシップ』に高1の2チームが参加しましたが、1チームが準優勝することができました」

●オリエンテーションで「田植え体験」を実施(高1)→みらい科で「食料品の企画・販売」(高2)

 今春、高1は宿泊オリエンテーションの1日目に長野県の菅平で田植えを行いました。田植えを体験する稲倉の里は農林水産省による「日本の棚田百選」に認定される美しい場所。現在は田植えの機械化が進んでいますが、ここでは昔ながらの手植えで行います。

大久保校長:「素足で田んぼに入りますから最初は阿鼻叫喚でしたが(笑)、最終的には全員が田んぼに入ることができました。米の価格高騰もニュースになっていますし、生徒たちは『どこから棚田に水を引いてくるのだろう』などと、消費者ではなく、生産者の視線でお米を作ることの大変さを実感したようです」

 そして、秋に収穫された高1が植えたお米は、高2がみらい科で企画した「食料品の企画・販売」で活用します。これは、6年間で最後の「社会実装」に向けた取り組みになります。

麹町女子_素足で棚田に入り、丁寧に手植えをしていく生徒たち
素足で棚田に入り、丁寧に手植えをしていく生徒たち

飯泉先生:「農業支援などの観点から高2生たちが食料品開発の企画を立て、この冬には東京八重洲にある大丸百貨店で米粉クッキーとレトルトカレーを販売します。収穫したお米を使う米粉クッキーは小麦アレルギーの人にも美味しく食べてもらうため、レトルトカレーは規格外の野菜を使って食品ロスをなくすためです。実際の製品作りは専門の方にお願いしますが、売り場には生徒たちも立ちます。接客も体験させていただきますので、事前にはそのための研修も行う予定です」

 ちなみに、スパイスとしてカレーに使う江戸野菜の「内藤とうがらし」も生徒たちが栽培。また、どんなクッキー、どんなカレーを作りたいかを班別にプレゼンしましたが、どれもが食べてくれる人を思いやる気持ちに溢れていたそうです。生徒たちの思いは「全員が同じものを食べて、笑顔になれるように」です。

●「グローバルコンピテンスプログラムGCP)」を導入

 これは、今年度の9月から、中1〜高1の「みらい科」で始まったプログラム。グローバルに活躍する資質・能力を磨き、ウェルビーイングの実現を目指すためのものです。

大久保校長:「GCPは、異文化理解やロジカルシンキング、オープンマインドなど、グローバル人材に求められる力を英語で育成するものです。国内で異文化を体験するために、ELT(英語指導講師)と英語のみの授業を行いますが、英語の授業ではなく、あくまでもグローバルコンピテンスを伸ばすための授業です」

 このように、机上で学んだことを実際に身体を使って体験すれば、それは生きた知識になり、ものの見方も多角的になっていきます。みらい科のすべてのプログラムは「自分の関心事」を「社会課題」に重ね合わせ、問いを立てて「調査→考察→表現→実装」というプロセスを踏みながら、具体的な行動へ繋げていけるようになることを目指していますが、「みらい科」は「みらい科」に留まらず、すべての教科に波及する取り組みと言えるでしょう。

飯泉先生:「自分にとって何が楽しいか、何が楽しくないのかはやってみて初めてわかることです。世の中には『あれ?』という種があちこちに散らばっていますので、生徒たちにはたくさんのことを経験してほしいと思っています。その種を拾えるのと拾えないのでは、経験値が大きく変わってきますので」

大久保校長:「本校の建学の精神は『聡明・端正』です。『聡明』は理性を表し、『端正』は品格を表します。どちらも生涯をかけて培っていくものですが、この二つを持ち合わせることができれば、物事の本質を公平な眼差しで見つめながら、周囲の人と力を合わせて次代を築いていくことができるはずです」

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