学校特集
青山学院大学系属浦和ルーテル学院中学校・高等学校2026
掲載日:2026年9月1日(火)
2018年に青山学院大学の系属校となり、今年で8年目を迎えた青山学院大学系属浦和ルーテル学院。青山学院大学への系属校推薦入学も増えていますが、現在の中2生が大学進学する2030年には、推薦入学の枠が大幅に拡大することが予定されています。同校は[1クラス25名×3クラス]を1学年とする少人数制でアットホームな雰囲気が特徴で、「ギフト教育」と呼ばれる独自の教育を行っています。「ギフト」とは「神様から贈られたかけがえのない才能や個性」のこと。そのギフトを見つけ出し、将来は自分のギフトを世界の人々を幸せにするために活かし、自分自身も幸せな人生を歩むことができるように。それが、同校の教育目標です。「ギフト教育」をアップデートし続ける同校の今を、理事長で校長の福島宏政先生に伺いました。
創立来70余年、キリスト教をベースにした教育を展開
平和をつくる人、主体的・探究的に生きる人を育てることを目指す
キリスト教に基づく人間教育を教育の土台とし続けて70余年。建学の精神を「神と人とを愛する人間。神と人とに愛される人間。」とする同校ですが、その教育方針は「ギフト教育」です。
ただ世界を見回すと、今なお戦争や災害が絶えません。2023年以来、理事長も兼任する福島校長は、一貫して「人を愛すること」と「平和をつくり出す人を育てること」が教育の使命だと言います。そして、次の2つの目標を掲げます。
福島校長:「聖書に『喜ぶ人と共に喜び、泣く人とともに泣きなさい』(ローマの信徒への手紙12.15)という言葉がありますが、現代の困難の原因の一つには、簡単に答えを求める風潮があるように思います。イエス・キリストの時代にも争いはありましたが、イエス様は暴力ではなく愛によって問題を解決しようとしました。私たちは家族や友人・知人には無償の愛を捧げることができます。しかし、自分とは無関係の人にはなかなか難しいものです。こういった愛は自然に芽生えるものではなく、教育でしか育てられないのです。本校では、さきほど申し上げた『喜ぶ人と共に喜び、泣く人とともに泣きなさい』という心の有り様を大切に、教育を通して人を愛することができる人、平和をつくることができる人を育てたいのです」
もう一つは「主体的・探究的に生きる人を育てること」。これは「ギフト教育」にも繋がっていきます。
福島校長:「生徒は一人ひとり、神様から『ギフト』を与えられています。『ギフト』とは長所や個性、才能、使命のことです。自分はどのような『ギフト』を持って生まれてきたのか、それをどう磨くのか。そして、自分のギフトを社会でどう活かしていくのか。『惜しまずに豊かに蒔く時は、刈り入れも豊かなのです』(コリントの信徒への手紙Ⅱ9:6)とは、それぞれが自分の価値に気づき、それをさらに豊かにしていこうとする生き方を示しています。自分の『ギフト』を、一生をかけて探究するということです。そして、そのギフトを他人のためにどう使うかを考える。そういう人を育てたいと願っています」
青山学院大学に系属校推薦で進学した、印象的な卒業生の話
ここで「ギフト」に関連して、印象に残る卒業生お二人のエピソードを福島校長に教えてもらいました。お二人とも、青山学院大学の理工学部で学ぶ学生です。
福島校長:「初等部から本校で学んだある女子生徒には、聴力に障害がありました。そのため補聴器をつけていたのですが、ひと言も聞き逃すまいと授業に集中するなど、とても努力していました。その後、系属校推薦で青山学院大学の理工学部に進学しましたが、昨年、大学のオープンキャンパスの際に再開しました。彼女は今、脳の働きを研究していて、それを将来的にAIに活かしたいのだそうです。人間の脳は聴覚からだけでなく、前後の文脈や表情から総合的に判断し、相手の言葉を理解しています。そうした脳の働きを応用できれば、さらに精度の高いAIが可能になります。聴力に障害があった彼女だからこその視点だと思いました。もう一人は男子生徒ですが、在校時は運動部で精力的に活動していました。その彼は今、スポーツで疲弊した身体を快復させるためのマッサージロボットの開発に取り組んでいます。ロボットといえば、最近ではAI兵器など軍事用でのインパクトが強いですが、そうではなく、人の健康のための平和的利用を目指しています。人を幸せにするAIやロボットの研究に取り組む彼らを見て心から嬉しく、また誇りに思いました」
青山学院大学では近年、相模原にある理工学部が注目を集めています。同校でも先進の研究施設が整う相模原キャンパスツアーを積極的に行っています。また、青山キャンパスでは毎週土曜日に政治、経済、法律、教育、文学、語学など各種の「学問入門講座」が実施され、毎回多くの高等部生が参加しているそうです。
少人数制だからこそ可能な、一人ひとりへのきめ細かい指導
どれほど志願者が増えようとも、1学年[75名×3クラス]の少人数制を貫く同校。なぜなら、生徒一人ひとりにしっかりと相対し、それぞれがギフトを見出すサポートをするには最適な人数だからです。
少人数制だからこそ可能な面倒見の良さ。生徒一人ひとりの顔が見える教育。数年前には、留学期間の関係で卒業式に出席できなかった生徒がいましたが、その生徒が帰国した後の6月、チャペルでたった一人の卒業式を挙行したこともありました。このような心温まるエピソードが少なくないことも同校らしさです。
「ルーサラン・アップデイト・プロジェクト」も進行中
青山学院大学の系属校となって8年。一昨年は系属校となって初めて中学に入学してきた生徒たちが卒業し、青山学院大学をはじめ多くの難関大学に進学しました。卒業生たちは今、それぞれの道で自らの「ギフト」を磨いています。そんな現在、福島先生は新たな教育施策「ルーサラン・アップデイト・プロジェクト」を進めています。主な柱は、以下の3つになります。
福島校長:「まず、図書館のリニューアルに取り組んでいます。本校は小学校から始まった学校ですので、現在の図書館は小学生に最適化した造りになっています。これを中高生のニーズにより相応しいものに改修する計画が進行中です。探究学習に活用できるように蔵書を充実させ、ネットワークを強化して、レファレンス機能に強いメディアセンターとしてリニューアルさせる予定です」
二つ目は、海外研修の拡充です。海外に複数の姉妹校があり、創立当初からグローバルな環境にある同校では、海外研修プログラムも年々進化しています。アメリカの姉妹教会のご家庭にホームステイする「米国研修」「長期留学」は伝統あるプログラムです。
福島校長:「さらに、さまざまなタイプの海外研修を増やしています。一昨年の夏休みからは、初心者も参加しやすいオーストラリア・プリスベンに7日間ほど滞在する留学を始めました。オーストラリア人のご家庭にホームステイをしつつ、提携しているオーストラリアのカレッジでの文化・自然交流や、体験学習を実施しています。また、昨年からニュージーランドでの2カ月のターム留学もスタートしました。さらに、カナダへの留学プログラムも計画中です」
三つ目の施策は、先生方のスキルアップを図るための教員研修です。
福島校長:「生徒を育て伸ばすためには、教員の力を高めることが何よりも大切です。また、AIの活用など急激に変化する時代に合わせ、教師も日々アップデートしていかなければなりません。そのために2種類の研修を行っています。一つはどの教科にも共通する指導技術の向上プログラムです。もう一つは各教科の専門性を高め、より高度な内容を適確に教授するための研修です。後者では、近隣の大学の教育学部の先生に授業作りを指導していただき、1年間をかけて授業をグレードアップしていくプログラムを実施しています。生徒のためであるとともに、教員として成長していけるような環境づくりも教員研修の大きな目的です」
アメリカ研修▶︎夏に約3週間の予定で実施し、中3から高2までの25名が参加。アリゾナ州フェニックスの教会員の家庭にホームステイをしながら、英語力のさらなる向上はもちろん、異文化体験やキリスト教理解でグローバルな視野も養います。
オーストラリア研修▶︎夏休みに7日間程度で実施。クィーンズランド州ブリスベンを拠点に、提携校での英語体験や同世代交流、自然体験などを行います。
日本研修▶︎アメリカの姉妹校から生徒と先生が来校し、同校で授業や部活、学校行事など学校生活を共にします。この交流で「もっと英語でコミュニケーションを取りたい」と英語学習に意欲的になる生徒も多いのだとか。
長期留学▶︎高2の7月から高3の5月までの10カ月間、アメリカ・アリゾナ州フェニックスの教会員の家庭にホームステイし、姉妹校に通学。アメリカで取得した単位は、日本でもそのまま認定されます。
ターム留学▶︎夏休み期間を活用し、主に高1を対象に実施します。オーストラリアの提携校に2カ月間留学し、英語力向上や異文化理解を行います。
好きなことを徹底的に学び、進路へと繋げる「フィールドプログラム」
例えば英語では4技能をしっかり身につけ、中3までに英検準2級の取得を目指すなど、中学では各教科ともに基礎を丁寧に、そして徹底的に固めていきます。
福島校長:「高校生になって偏差値が10〜20アップする生徒がいますが、これは中学時代、学習の基礎をしっかり固めているからこそです。本校では先取り学習はしませんが、一つひとつの授業を丁寧に、例えば事実の裏側まで深く掘り下げるなど、探究的な学びを実施していることが功を奏しています」
そして通常の授業のほかに週に1時間、自分の興味関心のある分野の学びを深める「フィールドプログラム」という学習活動があります。「フィールドプログラム」は「フィールドA(アーツ)」「フィールドE(イングリッシュ)」「フィールドS(サイエンス)」の3分野に分かれ、生徒は自分の興味のある分野を選びますが、これらは自分の関心に向き合い、進路を考えるきっかけともなっています。
フィールドA▶芸術や文学、歴史などをテーマに探究学習を行います。最も力を入れているのは世界遺産の研究。グループごとにテーマを設定し、ICT機器を活用して協働で調査・探究します。それぞれの世界遺産を訪ねるツアー企画をプレゼンし合い、最も優れたツアーを実地で行う計画を立てるなど、生徒たちは意欲的に活動しています。活動のまとめとして世界遺産検定に挑み、資格の取得を目指します。
フィールドE▶高いレベルの英語力を身につけることが目標で、英語によるディスカッションやプレゼンテーションを通して、実践的なコミュニケーション力などよりグローバルな素養を育んでいます。英検2級以上の取得を目指します。
フィールドS▶自然観察や理科実験、プログラミングなど、サイエンス分野を学びます。生徒たちに最も人気が高いのは自分たちで作った「ビオトープ」の観察で、生き物たちの実態を身近に学んでいます。数検や理科検にも挑戦します。
福島校長:「3つのフィールドに共通する探究学習の機会として、中3で広島での平和学習を行っています。それぞれの学びが『平和をつくる』という形に結実するよう願っています」
生徒一人ひとりのギフトを生かしたオーダーメイドの進路指導
青山学院大学への進学のほか、他大学進学も積極的に後押し!
青山学院大学への進学者は年々増え、2026年度は18名の生徒が各学部へ進学しました。
福島校長:「早慶・上智、国際基督教大学やGMARCHなどの難関大学に合格している生徒も多いですね。また、医学・薬学や芸術系に進んだ生徒もいます。幅広い進路を可能にしているのが、本校で『オーダーメイドの進路指導』と呼ばれる生徒一人ひとりに寄り添った指導です。教員は生徒の様子を日々観察し、その才能を見つけるサポートをする。また、年8回以上の面談のほか、無料の講習や受験講座も実施しています。希望があれば、たとえ生徒一人でもその講座を開設します。これも、少人数制だからこそできることだと思っています」
ところで、同校には先生として戻ってくる卒業生も増えていると言います。
福島校長:「英語科の教員は3名が本校の卒業生です。また現在、大学院で学ぶ卒業生も理科の教員として本校に勤務する予定です。小中高と6歳から18歳までが同じ学舎で学ぶ本校で、年齢関係なく一つの家族のように過ごしたためでしょうか。卒業生が教員として本校に戻ってきてくれることは、素直に嬉しいですね。同時に、これも本校の教育の一つの成果かもしれないと思います」
大学卒業後、社会人としての自分の居場所に母校を選ぶ卒業生たち。同校がいかに心地良く、いかに学びに相応しい環境かが窺い知れるお話です。
一人ひとりが自分のギフトを探し、それを磨きながら、オーダーメイドの進路指導で「自分らしい進路」を目指す。そして、青山学院大学への推薦枠拡大という環境のなか、他大学進学という選択もできる。同校の教育実践は、今の時代に一際存在感を示しているように感じます。
