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学校特集

関東学院中学校高等学校2026

指示待ちではなく、自主的なものづくりを追求する技術部の挑戦
抜群のチームワークのもと、一つの組織として突き進む

掲載日:2026年9月1日(火)

まるで一つの企業のように、独自の仕組みで組織化された部活動があります。関東学院中学校高等学校の「技術部」は、中高合わせて50名ほどが在籍する、校内でも一際熱い活気に満ちたコミュニティです。
顧問の寺島徹先生(技術科教諭)が見守る中、生徒たちは自ら方針を決め、独自の経済システムを運用しながら、エコカーレースでの自己ベスト更新を目指して活動しています。
今回は、生徒たちのリアルな活動風景や寺島先生へのインタビューを通じて、彼らがものづくりの中で育んでいる主体性や、自立して動くチームの魅力をお届けします。

主役は生徒たち。
主体性が躍動する技術部の活動風景

関東学院_技術部顧問の寺島徹先生
技術部顧問の寺島徹先生

 技術室のドアを開けると、心地よい緊張感と、活気に満ちた空気が広がっていました。関東学院中学校高等学校の技術部の活動は、生徒たちが自ら進行を務める全体ミーティングから始まります。

 チームごとにその日の活動内容を確認し、それぞれが責任を持って自分たちで決めたタスクをこなしていく姿は、まさに自立した大人の組織そのもの。顧問の寺島徹先生が要所でファシリテーションや総評を行うものの、基本的には先生が指示を出すことはなく、終始生徒たちによって自主的に運営が進められていきます。

 この日の活動では、間近に迫った部活動の保護者会に向けた準備が行われていました。部活動の保護者会があること自体が同校ならではの特徴ですが、特に技術部においては、生徒が自ら親御さんたちをもてなすという非常にユニークな取り組みを行っています。

 受付や飲み物の準備に始まり、活動報告のためのプレゼン資料作成に至るまで、すべてを自分たちで担当。活動の成果や魅力を最大限に伝えようと、各チームで一生懸命に準備を進めていました。

部内通貨「KG」がつなぐ、
社会の仕組みと生きる力

関東学院_事務長から依頼された、小学校のビオトープの柵作りに取り組む生徒
事務長から依頼された、小学校のビオトープの柵作りに取り組む生徒

 技術部の組織化された活動は、まさに一企業の仕組みそのものです。部内には3Dプリンターを使って自作したオリジナルの通貨である「KG」というポイント制度が存在します。部活内の通貨を貯めると、エコカーの製作に必要な材料や部品を校内の資材庫から購入できる仕組みになっており、生徒たちは出納帳を用いて入出金を管理し、リーダーの承認を経て先生に請求書を提出します。

 この通貨を貯めるために、自発的に行う清掃や備品の整理、後輩指導のほか、他の教科の先生からの「教室の棚を作ってほしい」「学園内の柵を作ってほしい」といった困りごとにも対応しています。取材当日も中学の運動会が実施されていましたが、こうしたイベント時の音響やテント設営の手伝いも技術部が請け負っており、その貢献に対して部内通貨が支払われる仕組みになっています。

 この独自通貨の導入について、寺島先生は「困ったことに、最初はみんなが材料を際限なく買ってしまい、部費のやりくりが大変になってしまったんです。そこでこの部内通貨を導入したところ、生徒たちの金銭感覚や管理能力が磨かれ、活動がより発展していきました」と振り返ります。

 直近では、世界情勢の変動によって石油系の材料費が急騰し、生徒たちが頭を抱えたこともありました。その際、なぜ遠く離れた世界の出来事が自分たちの材料費の値上がりに直結し、在庫切れを起こすのかという社会の仕組みまで、生徒たちは身をもって学ぶことになりました。こうしたトラブルの際にも、寺島先生はお店への問い合わせなどの下準備をあえて行わず、生徒自身に直接電話をかけさせ、自分たちの足で買いに行かせたそうです。

「社会やビジネスの縮図のような実践的な開発・運営を経験することで、生徒たちは潜在的に持っている生きる力をどんどん伸ばしていきます」と寺島先生は語ります。

驚異の大会記録を支える部員たちの熱量

関東学院_部員たちは主体的にイキイキと活動しています
部員たちは主体的にイキイキと活動しています

 部員たちのチームワークにも、目を見張るものがあります。エコカーの製作には組織的な分担が不可欠なため、生徒たちはそれぞれの「やりたいこと」と「得意なこと」を掛け合わせ、自然と役割を割り振っています。具体的には、空力技術が活かされる「ボディ」、車の骨組みとなる「フレーム」、動力源の「エンジン」、そして車を制御する「電気系統」という大まかに4つのカテゴリーに分かれており、各チームが密に情報を共有し、互いに助け合いながら開発に取り組んでいます。

 大会に向けた開発は、決して平坦な道のりばかりではありません。ある高2の生徒は「大会までに必ず車を完成させなければならないので、限られた時間の中でどう計画を進めるかというマネジメント能力が磨かれた」と振り返り、度重なるトラブルやピンチを乗り越える中で、プロジェクトを前へ推進していく力が身に付いたと語ってくれました。

関東学院_チームのさまざまな力を結集して大会に臨みます
チームのさまざまな力を結集して大会に臨みます

 同校はこれまで数々のエコカーレースに参戦して実績を重ねていますが、その開発にかける情熱は確かな成果となって現れています。実際に、低燃費競技会である「Honda エコマイレッジチャレンジ」においては、先輩たちから受け継いだ技術をさらにブラッシュアップ。ボディの形状を工夫して空気抵抗を極限まで減らし、タイヤ周辺のデザインにも徹底してこだわった結果、2026年に開催された「第17回もてぎ大会」にて、同校技術部S1チームは「525.263 km/L」という自己ベスト記録を出しました。

 何より印象的なのは、これほど高度な挑戦を、部員たちが心の底から楽しんでいる点です。ある中3の生徒が「今となっては、技術部以外に所属している自分が考えられない」と熱を込めて語れば、入学したばかりの中1の女子生徒は、男子生徒が大半を占める環境に最初は驚いたとしつつも「それ以上に、ものづくりに没頭する先輩たちの姿に魅力を感じて入部を決めました。元々細かい作業が好きだったので、実際にやってみるとすごく楽しいですし、先輩たちも本当に優しいです」と満面の笑みを見せてくれました。

 彼らを突き動かす入部動機もまた、とても情熱的です。ある高1の部員は、技術部の象徴である「赤いつなぎ」に強い憧れを抱き続けていた一人。「小6のとき、将来の自分を描くキャリア教育の教材に『赤いつなぎを着た自分』の絵を描いたんです。この部活に入るために、関東学院を受験しました」と、長年の夢を叶えた喜びを教えてくれました。

 また別の高2部員も、車やものづくりへの興味から中学受験の段階で同校を志望しており、技術部での活動を通じて「想像以上に高度な技術に挑戦できることや、仲間と協力して一つの成果物を生み出す楽しさを日々実感している」と、充実した表情で語ってくれました。

可能性は無限大。
ピザ窯の製作から東大合格までを紡いだ軌跡

 技術部での活動経験は、生徒たちの将来の進路にも直結しています。理系大学への進学にとどまらず、組織運営の経験から経済学部へ進んだ生徒や、楽器製作への興味が高じて芸術系大学の道へ進んだ生徒もおり、その歩みは多方面にわたります。

「進路は理系だけにとどまりません。生徒たちの『やってみたい』という動機と結びつくことで、その可能性は無限に広がっていくんです」と寺島先生は語ります。

 実際、技術部での活動実績は推薦入試や特別選抜の自己PRにおいても強力な武器となっており、近年では東京大学や横浜国立大学といった難関大学への進学実績を重ねています。大学側が求める「単に勉強を重ねてきただけでなく、本当にものづくりが好きな生徒」という人物像に、同部の生徒たちは見事に合致しているのです。

 今でこそ組織化された大所帯ですが、その原点は2009年にまで遡ります。きっかけは、ものづくりが好きな数人の生徒たちが、寺島先生の技術の授業の後片付けを熱心に手伝い始めたことでした。「部活動を辞めてしまい、このまま学校生活をなんとなく終えたくない」と話す生徒たちに、寺島先生がさまざまな技術を教え始めたのがすべての始まりです。

 その後、生徒たちから「大きな大会に出たい」という声が挙がった際、たまたまテレビのドキュメンタリー番組で紹介されていた低燃費競技大会(エコラン)を目にし、「これに出よう」と目標が決まりました。エコカーレースへの参戦には相応の資金調達が必要でしたが、学校の管理職をはじめ周囲の応援にも恵まれ、最初の半年で待望の1号車が完成します。初めて出場した大会では、他校の参加者たちが足りない部品を快く貸してくれたり、アドバイスをくれたりと、互いに助け合う光景が広がっていました。寺島先生も「運動部以外でこれほど温かい交流があるのか」と、当時の驚きと感銘を振り返ります。

 こうして自然とメンバーが集まり、2012年に「部」へと昇格。現在は週4日で活動しています。通常の技術の授業でも鉋(かんな)を使って小物入れを製作するなど、もともと同校にはものづくりの土壌がありますが、技術部では中学生のうちから溶接を習得したり、エンジンの分解に挑戦したりと、一般的な中高の枠を超えた高度な技術を養うことができます。

関東学院_手をかけて育てるから収穫の喜びがあります
手をかけて育てるから収穫の喜びがあります

 また、同部ではエコカー製作にとどまらず、「畑での栽培」も共通課題の一つに掲げているのがユニークな点です。かつては学校が管理する土地を、何もない状態から部員総出で開墾したこともありました。畑でバジルを栽培した際には、生徒たちから「ピザを作りたい」というアイデアが飛び出します。一見するとハードルが高そうに思える提案ですが、生徒たちはピザを焼くための「窯」まで自分たちの手で作り上げてしまいました。ほかにも、校内の梅やオリーブの実を収穫し、漬けて楽しむなど、栽培や食への興味も次々と形にしています。

 寺島先生は、生徒たちの「やりたい」という主体的な意志を決して否定しません。
「私は『それはできない』とは絶対に言いません。代わりに『どうやったら実現できるか、まずは考えてみよう』と伝えています」と寺島先生。予算や計画を盛り込んだ企画書を生徒自身にまとめさせることで、自由な発想を責任ある行動へと昇華させています。

一冊の「日報」に込める安全のバトン

関東学院_程よい緊張感のなか、ミーティングが行われます
程よい緊張感のなか、ミーティングが行われます

 部活動を牽引する部長のHさん(高2)の学年は、メンバーが4人にまで減少するという苦境に立たされました。しかし、「歴代の先輩方の姿への強い憧れから、自ら立候補した」と語るHさんは、根気強く組織をまとめています。

 その組織づくりの要となっているのが、部員が個々に持つ「日報」です。Hさんは「初めて扱う工具は、物と名前が結びつきにくい。だから日報に自分の使った工具の絵を簡易的に描き、下に名前と使い方を書かせる工夫をしています。そうすれば、忘れたときにもすぐ見返せる自分専用の冊子になります」と、技術を確実に継承するためのアイデアを語ってくれました。

 また、一歩間違えれば大怪我につながる工具を扱うため、安全管理には細心の注意が払われています。取材時も、回転工具を使用する生徒の横には必ず先輩が寄り添い、有事の際には即座に電源を抜ける体制を整えていました。

「エンジンをかけるときは絶対にガソリンを近くに置かない、必ず消火器を持っていくなど、万が一のときの対策をずっと考えるようにしています」と語るHさん。危機管理に対する強い意識は、部員たちの日常生活にも深く根付いています。

 このような妥協のない姿勢は、部活中のマナーや身だしなみ、スマートフォンの使用制限、そして徹底的な整理整頓にも現れています。技術室や地下の作業エリア、車を置かせてもらっている廊下などは「すべて自分たちが学校から借りている場所」という認識のもと、毎日夕方になると全員で徹底的な掃除を行います。作業に熱中している部員もすぐに片付けに取りかかれるよう、タイムキーパーの生徒が5分刻みで声を掛け合い、時間管理を徹底しています。

「掃除と整理整頓ができなければ、いいものは作れません。命に関わる車を製作しているからこそ、日頃からわずかな『違和感』に気づけるようになってほしい」と寺島先生は話します。

 こうした先生の教えを胸に、現在、卒業制作として最後のエコカー製作に励むHさんたち高2のチームも、現場で徹底的な試行錯誤を重ねてきました。スタイロフォーム(発泡プラスチック系の断熱材)で成形したベースに、種類の異なるガラス繊維を何層も貼り付け、ボディの強度を追求しています。

 燃費を競うレースの世界は、当日の天候や整備のわずかな狂いで出走すら危うくなる過酷な舞台です。「技術と運、双方の徹底した準備が求められる」という厳しさがあるからこそ、部員たちが全員で苦楽を共にする姿勢が生きてきます。アットホームな雰囲気の中に垣間見える強い絆こそが、壮大な挑戦を支える同校技術部の強みなのだと、深く感じさせられました。

「人になれ 奉仕せよ」の精神を胸に、
ものづくりが育む豊かな人間性

関東学院_技術室の外では、高3生が卒業制作に取り組んでいました
技術室の外では、高3生が卒業制作に取り組んでいました

 同校の技術部には、生徒たち自身が考え出した「Trust(信頼)・Thanks(感謝)・Responsibility(責任)」という理念があります。ものづくりは1人ではできないからこそ、周囲に助けてもらうことに感謝し、お互いを尊敬して信頼し合い、自分の役割に責任を持って一つのものを作り上げる。この精神が、生徒たちの間で脈々と受け継がれています。

 その強い絆は部活動を引退した後も続いており、大会のたびに多くのOB・OGが応援に駆けつけるだけでなく、活動後の片付けの時間には、大学生になった卒業生たちがわざわざ作業を手伝いに来てくれるそうです。

 上級生から下級生への確かな技術の継承も、同部の強みです。かつては後輩の指導方法に試行錯誤した時期もありましたが、現在は、最も技術を持つ高2などの上級生が、自分たちの作業を進めながら中1の後輩を細やかにケアする体制を整えています。寺島先生は「上級生が経験と知識をもってサポートし、後輩を気にかけて伸ばしてあげる。中1の段階でものづくりの楽しさをたくさん体験してもらうことが大切です」と語ります。

 同校のスクールモットーである「人になれ 奉仕せよ」という教えは、技術部の活動の根底にもしっかりと息づいています。自分たちの磨いた技術をただ己のためだけに使うのではなく、学校や先生方の困りごとを解決するために役立て、周囲に喜んでもらう。その貢献のプロセスを通じて、生徒たち自身も大きな自信をつけ、人間的に成長していきます。

「自分のことだけではなく、誰かのために自発的に動く。技術部の活動は、まさにこのスクールモットーを体現していると言えます」と、寺島先生は誇らしげに目を細めます。

 単に技術力を高めるだけでなく、ものづくりを通じてお互いを思いやり、社会で力強く生き抜くための豊かな人間性を育む関東学院中学校高等学校の技術部。技術室を後にする彼らの頼もしい背中を見送りながら、ここで培われた経験と仲間との絆は、生徒たちにとって一生の財産になるに違いないと感じました。

 主体性と優しさに満ちた彼らの熱い活動の空気を、ぜひみなさんも一度、学校へ足を運んで肌で感じてみてください。

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