学校特集
中村中学校・高等学校2026
掲載日:2026年9月1日(火)
1909年、東京の下町・江東の地に女子教育の灯をともすべく創立された中村中学校・高等学校。「清く、直く、明るく」を校訓とし、小規模で生徒一人ひとりを大切にする、自由で伸びやかな校風が魅力の女子校です。長年にわたり生徒たちの成長を見守ってこられた入学対策部部長の野志尚美先生に、同校の教育について伺いました。
一歩踏み出す力を育む
生徒たちの自治活動
校内に足を一歩踏み入れると、温かな雰囲気に満ちている中村中学校・高等学校。生徒たちからは「学校が大好き」というオーラがあふれ出ています。
例えば学校説明会などの行事で、受験生親子の案内役をはじめ、さまざまな役割を担っている"中村アンバサダー"という有志の生徒たちがいますが、近年彼女たちの活躍ぶりが目覚ましく、先生方にとっても頼もしい存在となっています。
「学校説明会ではサポート役というよりも、すでに中心的存在として活躍してくれています。受験生の時に在校生に優しくしてもらったからと、アンバサダーを希望する中1が最も人数的に多いのですが、中には"アンバサダーとして、日曜日は学校に捧げます"と言ってくれている生徒もいるほどです」と笑うのは、入学対策部部長の野志尚美先生です。
中1から高2までの生徒が挙手制で務める"中村アンバサダー"ですが、希望者の数が年々増え、今年度はなんと170名を超える生徒が名乗りを挙げました。1学年の人数が中高共に120名ほどという小規模校なので、いかに"中村アンバサダー"として、中村の魅力を受験生たちに伝えたいと思っている生徒が多いかが理解できます。
「たくさんの生徒が希望して、喜んで取り組んでくれることがありがたいですね。
初心者アンバサダーは経験者と組んで事前のリハーサルなどを経て本番に臨みますが、例えば校内で自分がいちばん好きな場所についてなど、それぞれが自分なりの言葉で語れることも大切にしています。
学校説明会のたびにアンバサダーの出欠を確認していますが、出席を希望してくれる人数がかなり多くなるケースもあり、そういった時には次回にお願いとお断りすることも出ていて、申し訳ないと思いつつも贅沢な悩みを抱えている状態です」(以下、野志先生)
この活動に参加しているのは、いわゆる活発で目立つタイプの生徒だけではないそうです。
「お客様をご案内している時の姿や上級生として後輩に接している姿が、普段の印象と大きく変わる生徒もおり、積極性を見られることがとてもうれしいですね。また中2や中3、高1など途中からでも参加したいと勇気を出してくれる生徒もいて、その成長ぶりに感動します。
彼女たちなりのやりがいを見出してくれ、主体性が身についていることを実感できます」
"中村アンバサダー"の今後の展開について、野志先生が教えてくれました。
「先輩から後輩への経験の継承を含めて、組織をきちんと整えていきたいと考えています。参加してくれている生徒たちの声をもっと生かしたり、アイデアを募ったり、特に上級生には私たち教員と一緒に戦略班として活躍してほしいですね。
私個人としては、与えられた仕事をこなすだけでなく、自分で課題を探してやってみるという、もう一歩踏み込んだ力を身につけてほしいと思っています」
こうした活動などを通じて生徒たちは「達成感」を得ています。自分が人の役に立っているという実感「自己有用感」から「自己肯定感」が育まれ、大きく成長する一つの機会となっています。
自分自身と真摯に向き合いつつ、
人間関係を円滑に図る術を学ぶ
中村では、「Competency(機に応じて活動する力)」を育み、自己のキャリアデザインを求めていくことができる「自主自律型学習者」の育成を目指しています。
「30歳になった時の自分がどうありたいかを自覚し、そのためにはどんな学びや資格が必要なのか、その希望を叶えられる場所はどこなのかを逆算して考えていきます。生徒一人ひとりの希望進路を叶えることは学校としてもより尽力していきますが、大学進学がマストではありませんし、ましてや大学入学はゴールではありません。もちろん国内にとどまっている必要もありません。
いずれにしても、"自分はどうありたいか"、"なりたい自分に近づくためには" という思いをエネルギーとして、生徒自身が前進していく力に変えてほしいという思いで向き合っています」
これらを踏まえた上で、中1の段階で最も大切にしているのは、自分自身を知り気持ちをきちんと表現できることと、他者の気持ちにしっかりと寄り添える力です。
「時代も変化しており、求められる力も多様化している中で、本校では中1の早い段階から人間関係を築ける力と自分の思いや考えを伝えられる表現力、プレゼンテーション力を磨いています」
中1で入学してすぐに開催されるオリエンテーションでは、学校について知るだけでなくレクリエーションなどを通じて友だちとの親睦を深め、学校が安心して過ごせる場所であることを学びます。
また、長らく実施されているプログラムのひとつとして、「会話について考えよう」をテーマにしたグループワークがあります。同じ意味でも言葉の選び方で相手の受け取り方が変わる「ふわふわ言葉」と「チクチク言葉」を意見交換しながら考え、コミュニケーションの土台作りを図っています。
あわせて自己管理能力を養うために、手帳を活用して1週間単位で予定や持ち物、提出物を把握し、毎日の家庭学習を計画的に進めるという習慣づけを行っており、日々の振り返りも大切にしています。
「学習面での達成感も大切ですが、それだけに限らず、これまで関わりがなかった子とも話せたなど、ちょっとしたことでもいいんです。自分ができるようになったことに目を向けられると自信につながっていくのかなと思っています」
昨年まで現高1を担当していた野志先生が教えてくれました。
「中学卒業時に卒業文集を作り、3年間で経験したことや成長したことを振り返りました。本人なりのステップアップが感じられますし、できている自分に目を向けることでその次の成長への促しになるのではないかと思っています」
現在は高3の授業を持っている野志先生。
「中テストの際の解答欄に、できるようになった分野、もっと頑張りたい分野、そのためのプランニングについて記せるスペースを作ったところ、生徒たちはものすごい熱量で書き込んでくれたんです。
その時の思いを今後につなげられるように、コメントを入れてできるだけ早く返却するようにしています」
自分の思いや状況を客観視し、明文化することで見えるものが多々あります。それは生徒自身だけの問題ではなく、先生方も日々学びになっているそうです。
「さまざまな個性をもつ生徒が集う本校ですが、例えば普段はおとなしく見える子であっても自分が頑張ったことやできるようになったことを書いてもらうことで、どんな思いで日々を過ごしていて、どう成長していったのかがよく見えてきました。
こうした数値化できないような力が彼女たちにしっかりと培われていることを実感でき、私たちの教育活動は間違っていないのかなと感じています」
先輩から後輩へ紡ぐ、
成長への道筋
中村では高校から3つのコースに分かれます。個人探究やPBL型学習を進め、自ら課題を見つけ解決に向けて学ぶ「探究コース」、理系志望者と難関大学の一般選抜を目指す生徒が共に学ぶ「先進コース」、全員必須の留学などを通じて語学力はもちろんコミュニケーション力や課題発見能力などを養う「国際コース」です。
中学から課題解決に向けて考え、提案する探究活動も熱心に行っています。
中1は「SDGs研究」を、中2は「企業研究」を行い、中3ではそれらの経験を踏まえて、自分たちで企業へのアポ入れを行うところから「企業訪問」を実施。
「中3では社会の仕組みを少しでも学んでほしいという思いで開催しています。仕事とは何か、そもそも働くことの意味は、といったことを一緒に考えていく機会としています」
これらの学びは、毎年2月に開催される探究学習の発表会「NQフェスタ」で、1年間をかけて学んだ成果を披露し、共有します。
共通しているのは、単に調べた内容の報告ではなく、自分たちの立場でもできることを考え、提案していく姿勢を求めていること。
こうした活動からも生徒たちは、自分の"好き"を見つけたり、将来への糸口を手繰り寄せたり、自身の思いや未来と向き合っています。
中3以上では学齢に応じた内容での「先輩を囲んで」を毎年開催しています。年度により内容が変わることもありますが、中3では高校からのコース選びについて、内進生の先輩からの話を聴く機会を設けています。
「先日行われた、中3の『先輩を囲んで』に登壇してくれた高1の生徒は、以前偶然立ち話をした時に、中学の時に成功したと感じた点や反省点を話してくれたんです。それを後輩たちに率直に伝えてほしいとお願いすると、彼女なりに資料を作って本番でプレゼンしてくれました。サラリとこなす様子を見て、表現力が身についていたと成長を感じ、思わず目頭が熱くなりました」
先の"中村アンバサダー"の活動なども含めて、先輩から後輩へ、自身の経験を伝えていくことを大切にしている同校。プレゼンテーションの機会を大切にしていますが、活躍するのはいわゆる成績上位者だけではありません。きちんとコツコツと努力を積み上げている生徒など、一人ひとりに先生方の目が行き渡り、全員が光る場をそれぞれの個性に則って用意し、少しずつ挑戦できるよう、そっと背中を押しています。
「下級生からすると、先輩の言葉はずっしりと重みをもって響きます。下級生たちは身近な先輩の姿を通じて自分の将来をイメージしてほしいですし、コツコツと頑張って伸びた先輩の話は『自分も頑張ればああなれるかも』という励みになります。話し手にとっても学びになるようにと、さまざまなタイプの生徒にプレゼンをお願いしています」
野志先生が教えてくれたのは、同校で見られる生徒たちと先生方の温かなやり取りです。
「生徒たちは、自分が何かをできるようになるとうれしそうに報告してくれます。その際にはしっかりと受け止め、きちんと私自身の言葉で褒めるようにしています。より関係性ができてくると、『もっと上を目指して頑張れるよ!』なんて言うこともあるのですが(笑)。
彼女たちが自分なりのペースで成長してくれている姿を見られることは、この仕事をやっていてよかったと思う一つの瞬間です」
生徒たちの成長ぶりに触れるにつれ「最近はますます涙もろくなってしまって」と笑う野志先生ですが、「生徒自身が自走できることの大切さを改めて感じています。いつどこにどんなきっかけがあるのかも人それぞれ。成長を実感するのは在校中でなくてもいいのです。大人になってから『そういえば中学の時にあんなことを言われたな』なんてふと思い出してくれたらうれしいですし、そういう場所でありたい、その時に備えられる土台をしっかりと作ってあげたいと思っています」と教えてくれました。
なお、保護者面談の際、「その子のいいところをお伝えし、ご家庭でも褒めて伸ばしていただけるよう心がけています」と話す野志先生。
保護者には生徒の課題点だけでなく、できるようになったことや成長を感じられた部分をより積極的に伝えているのだそうです。
高大連携で視野を広げ、
"学びたいこと"を鮮明に見据える
テンプル大学JAPANや桜美林大学、共立大学など8つの大学と連携協定を結び、近年は特に活発に高大連携教育を行っています。 中3の生徒たちが日本女子大学でキャンパス見学を行った際には、「在学中のOGがいろいろとお世話を焼いてくれたようで、生徒たちも喜んでいました」と野志先生。 「神奈川歯科大学の方がお越しくださり、歯科だけでなく医療全般への興味関心が広がるようなお話を中学生にしてくださいました。 高校生たちは東京海洋大学での授業や実験に参加させていただき、とても充実した経験となったようです」 なお、中村らしい取り組みに高3での「キャリアサポーター制度」があります。これは全教員が2~3人の生徒をチューターとして受け持ち、面談などを通じて細やかなアドバイスをしながら、進路決定まで担任と二人三脚でサポートするシステムです。
さまざまな経験を積むことで
積極性を獲得する生徒も
そのほかにも中村には、さまざま学びの機会が用意されています。例えば中2では3日間、英語を集中的に学ぶ「国内ウインタースクール」を実施しています。2日目の「フィールドワーク」では、中1で学んだ深川地域の歴史や名所・旧跡を外国人留学生に英語で案内しています。
例年、夏に開催されている高校生を対象とした希望者参加型の「ボランティア研修」では、英語力プラスαの学びとしてボランティア活動を行っています。
「カンボジアの現地の小学校では日本文化を伝えて、一緒に遊びました。昨年は体育祭で使用したハチマキを綺麗に洗って持っていったところ、現地でミニ運動会を開いてくれました。
生徒たちのハチマキは本当にささやかな贈り物ではありましたが、とても喜んでいただき、使ってもらえたこともありがたいと思いました。
こうした活動を通じて、生徒たちは改めて日本での何不自由のない日常のありがたみを実感するようです」
なお先に登場の"中村アンバサダーとして日曜日を捧げます"と話した現・高1の生徒は、中3の時からアンバサダー活動に参加したそうですが、中2までは比較的おとなしい印象だったのだとか。
「中3になった頃から、物事を幅広く捉えられるようになり、精神面での大きな成長を感じました。アンバサダーに立候補したことも大きな一歩だったかと思います。中3ではアメリカ・コロラド州デンバーで行われた希望者制の海外サマースクールに参加し、海外で11日間の生活を送る中で、家族や学校のありがたみがわかるようになったと話してくれました。それで自分も学校の役に立ちたいという思いを強くしてくれたようです」
この生徒はそうした活動の一方で、自分自身の将来と真剣に向き合った結果、高校から国際コースへの進学を決めたのだそう。
このように中3の生徒たちは、自分の将来をしっかりと考えるタイミングですが、同校では高校受験がない分、積極的に興味のあることに取り組んでほしいと伝えているそうです。
「大学のオープンキャンパスに行ったり、地域のボランティアに参加したり、海外研修に参加したり。また近年では、生徒が個人で探究活動のイベントにエントリーするというケースも珍しくなくなりました。さまざまな経験を積んで成長した姿が見られます」
これら一つひとつの教育活動が有機的につながりを持ち、生徒たちの成長を大きく促していることがわかります。小規模だからこそ、先生方の目が生徒一人ひとりに届き、それぞれの個性を尊重しながら寄り添い、距離感を測りつつ、しかるべき時が来たら手を離し、自立を促す土壌があります。
保護者と学校とが近い距離感で共に生徒を見守っている中村中学校・高等学校。同校の日常生活をのぞきに、ぜひ学校説明会などに足をお運びください。
