学校特集
東海大学菅生高等学校中等部2026
未来の「種」を撒く場所
掲載日:2026年8月7日(金)
環境教育(探究)と国際理解教育を2本柱に、「スガオDX」と銘打った独自の教育プログラムを展開する東海大学菅生高等学校中等部。恵まれた自然環境の下、全国レベルの成績を誇るクラブ活動が活発に行われています。2028年度から完全中高一貫体制に移行する同校は、中等部の全学年でAI(Chat Bot)を活用する、全国屈指のAI先進校です。文武両道を合言葉に、クラブ活動にも勉強にも本気で取り組める場所。10年後、20年後の「次代を生き抜く力」を育む先進的な教育と同中等部の可能性について、校長の布村浩二先生にお話を伺いました。
VUCA時代を生き抜く力を育てる
■クラブ活動と勉強を両立させるオンライン補習
東京・あきる野市の高台にそびえる地上6階、地下2階からなる校舎は、東京ドームの約1.2個分という建物で天井が高く、「学びの城」と呼ばれています。
クラブ活動が盛んな同校の広大な敷地内には、Jリーグの公式戦も開催できるJFA公認の本格的な人工芝グラウンド、大小2つの体育館など、スポーツ施設も充実。体育系クラブは、甲子園出場経験のある硬式野球クラブ、全国大会の常連校である女子チアダンスクラブ(King Fishers)、全国大会で優勝し、世界大会の日本代表メンバーも輩出している女子ソフトボールクラブなど、強豪揃い。文化系クラブも、高等部の吹奏楽クラブは全日本吹奏楽コンクールの金賞常連校(通算5回)です。学校周辺の里山や川で野鳥や水中生物を観察するエコクラブも、同校ならでは。クラブ活動に魅力を感じて入学する生徒が多いのも、納得でしょう。
布村校長:「本校のベースは文武両道です。最近は外部委託などが増え、教員が直接関わるクラブ活動が衰退傾向と言われますが、多くの保護者はやはり、学校で頑張ってほしいと思っていらっしゃるのではないでしょうか。集団行動の中で身につける規律や規範、諦めない精神など、クラブ活動で鍛え、培われる『非認知能力』はとても大切な能力だと思っています」
そうした同校の良さが周知されて、今年度の新入生は昨年の1.7倍に。2028年度から完全中高一貫校が完成し、これまで中等部で実践してきた「スガオDX」やAIを導入した先進的な授業を発展させる、密度の濃い教育体制を構築しようとしています。
■非認知能力こそが、未来を「生き抜く力」となる
同校では、クラブ活動で育まれる「忍耐力」「精神力」「協調性」「自制心」など、数値化できない「非認知能力」こそが、変化の激しいVUCAの時代を生き抜く力と位置付けています。これらの非認知能力のベクトルを学びに向けることで、学力も大きく向上できると判断しているのです。
布村校長:「クラブ活動によって身に付くもの、人間的に成長できることはとても多いと思います。本校の入学者が増えているのも、クラブ活動も勉強も両立できる環境が整っていることが周知されてきた結果だと思っています。何より学校を取り巻く環境が魅力的ですから、元々ポテンシャルがある学校なのです。これからは、間違いなくAIが今以上に普及していきます。そこで重要なのは、『AIに使われない力』。生きるために必要な力の土台は、本校のようなさまざまな経験、文武両道で鍛えた力を備えた生徒だからこそ、持ち得るものではないでしょうか」
夕方6時半までクラブ活動で頑張り、家に帰ってから勉強に取り組むという生徒のために、UEPという業者と協力してアフタースクールの学習サポート<S-OL(スガオオンラインラーニング)プログラム>を用意しています。
布村校長:「素直な生徒が多いのも、本校の良いところ。クラブ活動と勉強が両立できるように、アフタースクールの学習サポート体制を整えています。夜8時半からのオンライン補習(週3日)は中1の104名中90名弱が受講していて、生徒たちにも好評です。オンライン学習のない日でも机に向かうようになったという声も多く、家庭学習の習慣が身についてきました」
放課後に教員が対面で英・数・国の補習授業と、20:30〜自宅で受講するオンライン授業は、普段の授業と連動した内容を扱う。メタ文字を用いて実施するため、1対1で添削を受けながら学ぶ効果があり、有名塾出身のベテラン講師が指導。
■生成AIは「学びのパートナー」
同校の教育プログラムの特徴は、布村校長が全国に先駆けてAIを授業に取り入れた「スガオDX」です。今では中等部の全学年で、総合学習の時間やその他の多くの教科で、生成AI(Chat Bot)を駆使した探究型授業を行っています。
布村校長:「今では、生徒たちがAIを使って自分で問題を作れるようになっています。内容を理解していなければ問題は作れません。そこまでくれば、学ぶことも楽しいし、前向きな意欲が湧いてきます。情報の授業の一部では、最先端教材としてVEXロボティクスを導入して、ロボット設計やプログラミングなどデジタル社会で必要なスキルを実践的に学んでいます。ロボットも、生徒自身が作れるようになっています」
生成AIの能力は、まさに日進月歩。昨年、赤塚不二夫の漫画『天才バカボン』に登場する「ウナギイヌ」をモデルに、描画ソフトを使って「2つの生物を組み合わせたキャラクター」を生成する授業がありました。1年前は、Chat Bot が"キモかわいい"概念を理解できず、生徒たちは四苦八苦しながらプロンプトを考えていたのですが、今では、"キモかわいい"キャラクターもあっという間に作ってしまいます。
「AIを活用することで、世界が変わる」ことを実感した生徒たちにとって、今や「AIは学びのパートナー」として、共に生きる存在なのです。
同時に、AI先進校だからこそ、メリット・デメリットも見えてきています。
布村校長:「生徒全員がiPadを持っているので、問題も模範解答も瞬時に共有できて効率が良い反面、自分の解答をその場で消して上書きしていくので、間違いが残らないマイナス面もあります。1から10までデジタルに頼るのではなく、定期考査は敢えてペーパーテストにするなど、AI時代の一歩先を見据えた取り組みにシフトしています。今やChat Botだけでなく、小学生でもGemini、Cloudを使っている時代ですから、AIリテラシーは必須です。正しい使い方や危険性も含めて、リテラシー教育を強化しています」
VEXロボティクスを用いたロボット活動を行う「VEXクラブ(ロボットプログラミング)」も発足。オープンスクールの受験生向けクラブ体験として、VEX(ロボット)の操作や組み立てが体験できるプログラムも人気を集めています。
学校独自のサーバーを持ち、同校用にカスタマイズした生成AI(Chat Bot)を活用して、プログラムなど AIスキルを学ぶ。STEAM教育や探究活動、グループワークなどにも役立てる最先端の授業を展開中。理系科目や「総合学習の時間」では、アルゴリズムやフローチャートからきちんとプログラムの仕組みを学び、ドローンを自由に飛ばせるプログラムなどにも挑戦する。
教育の2本柱は、自然環境を生かした環境教育(探究)と国際理解教育
■「グリーンインフラプロジェクト」で循環型農業を実践
同校の環境教育(探究学習)は、学校の周りに里山や雑木林が広がり、野生のホタルが自生する清流が流れる「菅生フォレスト」の自然環境があるからこそ可能な取り組みです。「総合的な学習の時間」では、この自然環境の中に積極的に飛び込んでフィールドワークを行い、野鳥や水中生物を調べるなど、自然と一体となった環境教育を行っています。
また、田中茂範慶應義塾大学名誉教授の指導と、株式会社AGRIKOの協力による、生物多様性・循環型農業・地域活性化を3本柱とした探究活動「グリーンインフラプロジェクト」を実践しています。大学の専門家や企業との産学共同プロジェクトで、3本柱の一つである循環型農業は、魚の養殖と水耕栽培を融合させた、実践的な学びです。
布村校長:「アクアポニックス(循環システム)は、魚の排泄物をバクテリアが分解し、それを肥料とする野菜が水耕栽培で育ち、浄化された水が再び水槽に戻るという仕組みの循環型農業です。生徒たちはAGRIKOのラボで育った野菜(レタスやバジル)を摘んだり、その様子を観察します。英語で探究するプログラムの監修にも携わっていただいている田中名誉教授が、大変ありがたいことに、わざわざオリジナルの探究用の手作り教材を作ってくださいました」
毎年6月になると、学校周辺で野生のホタルの大乱舞が見られるそう。「菅生だからこそ体験できる環境教育には、可能性がたくさんあります。次は何ができるだろうと考えるだけでも楽しいですよ、ワクワクしてきます」と布村校長は話します。
学校の立地を生かし、東海大学の教授と学生が来校し、生徒と一緒にフィールドワークを実施。課題研究、結果発表の探究型活動に繋げている。大学の総合型選抜大学入試で必要になるポートフォリオとしても有効。
■生きた英語に触れる
異文化交流のベースとなる英語はコミュニケーション・ツールです。授業では、ネイティブ教員と日本人教員の2人体制で、英語4技能・5領域を強化。そして、生徒たちには、シャワーのように英語に触れて、世界を身近に体感できる経験をしてほしいと願っています。
まず、世界67カ国の同世代の生徒たちとオンラインで結び、リアルタイムで国際交流や課題解決型のディスカッションを行う教育プログラム「With The World」を導入しました。昨年は医学・難関大コースの生徒たちがグローバル探究学習の授業の中で、インドネシアの生徒と交流しました。
「With The World」は、自分の日常や出来事を日記形式で記録した情報をお互いにPadletを利用して交換した状態で、オンラインによる交流を行います。自己紹介から始まり、「将来の夢は何ですか?」「週末は何をしますか?」など、やり取りを重ねるうちに盛り上がり、充実した授業になりました。
布村校長:「事前に興味を持っている状態でオンライン交流を行うので、やり取りも活発になります。最初は医学・難関大コースの代表の生徒たちが交流しましたが、来年度からは全学年で展開できればと思っています」
また、今年度から、テンプル大学ジャパンキャンパスTemple University Japan Campusの学生を招いて生徒たちと文化交流を行っています。同大学は、世界約90カ国・地域から学生が集まる、日本の中にあるアメリカの大学です。同大学のリーダー育成プログラムの一環で、大学生と生徒が1対1で何組かのチームを作り、「里山体験」を行っています。
布村校長:「『日本語禁止』という条件で、バーベキューや昆虫採集、学校の目の前を流れる清流で魚やサワガニ採りなど、大学生と一緒に生徒たちがさまざまなアクティビティを楽しみます。アメリカの大学生も日本の自然を体験して、生徒たちも生きた英語に触れながらグローバル体験ができる。お互いにwin-winの交流ができるので、これも年間複数回、全学年で行えるようになればと思っています」
また、「オーストラリア研修」(中2〜高3の希望者/16泊17日)や、生徒約5名に1名の外国人大学院生がグループリーダーとして付き、ゲームやディスカッションを行う「ISA グローバルスタディーズプログラム」(中1・初等部1年の夏休み、中2・3は冬休み)の交流など、TGGでオールイングリッシュ体験など、生きた英語と接する機会をできるだけ増やしています。
■リアルな社会に触れるキャリア教育
受験生や保護者の最大の関心は、同校で学んだ子どもたちが「将来、どのように育っていくのか」ではないでしょうか。そして、先の見えないVUCA時代に、社会で活躍することができるのだろうかと。
同校のキャリア講座は、政治家、現役のパイロットやCA、落語家、プロボクサーなど、多様な分野のプロフェッショナルを招いて、経験者の声を聞く「夢育て講座(職業体験講座)」や、企業訪問をアバター空間で擬似体験する「メタバース」、そして、世界の著名人の声に触れる動画体験「インスパイア・ハイ(Inspire High)」など、バラエティに富んでいます。
・「夢育て講座(職業体験講座)」 さまざまな分野で働いている方々を講師とし、体験的な授業を通して、生徒一人一人が働くことの意義や進路について深く考える機会としている。
・メタバース アバターとなって、仮想空間内で出会った友人と一緒に、実在の企業を仮想空間内で訪問。自分の適性を意識した模擬就活を行う。
・インスパイア・ハイ 世界中のクリエイティブに生きる大人と全国の10代と相互にインスパイアし合い、自分の生きる軸とクリエイティビティを発見する学習を映像で体験する。
布村校長:「『夢育て講座』では、例えばパイロットの方に『着陸する時は毎回自動操縦ですか』『毎回、手に汗握るのですか』とか、子どもらしい率直な質問にも、みなさんが真摯に答えてくださいます。やはり、『なぜ、その仕事を選んだのか』『きっかけは何だったのか』とか、リアルな言葉が生徒たちには一番響くようです。キャリア教育を3つも実施している学校は少ないのではないでしょうか。この中の何か一つでも、生徒の心に引っかかることがあればいい。心に小さな種が落ちて、いつか大きく花開くことになればいい。学校は、そういういろいろな種を蒔く場所だと思っています。自分が何者なのか、気づきを得るためのチャンスをたくさん提供する場所なのです」
