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学校特集

サレジアン国際学園世田谷中学高等学校2026

多様な価値観が出会う、その先へ。「NEXUS」を起点に進化する学び

掲載日:2026年9月7日(月)

変化の激しい時代を生きる子どもたちに、これからどのような学びが必要なのでしょうか。
知識を身につけるだけでなく、自ら問いを立て、多様な価値観を持つ人と協働しながら課題に向き合い、自分なりの考えを深めていく力。そのような力を育むため、サレジアン国際学園世田谷中学高等学校では、2026年度から新たな学びの体制をスタートさせました。
その背景には、社会や学びを取り巻く環境の変化を見据え、「世界市民力」の育成という教育目標を、これからの時代にふさわしい形で実現したいという思いがあります。
今回は、教頭・村井 純先生と本科推進部長・市橋朋之先生に、新たな学びに込めた思いや、それぞれのプログラムの特徴、そして同校が目指す教育について伺いました。

2つの学びが出会う「NEXUS」。
日常の中に多様性を組み込む教育

 2026年度、サレジアン国際学園世田谷中学高等学校では、新たなホームルーム編成「NEXUS(ネクサス)」がスタートしました。NEXUSは、EDGE(エッジ・旧本科クラス)とVISTA(ヴィスタ・旧インターナショナルクラス)の生徒が1つのホームルームで学校生活を送る取り組みです。英語など一部の授業はそれぞれの学びに応じて行いながら、ホームルームや学校行事、学年活動では日常的に協働します。

サレジアン世田谷_教頭の村井 純先生
教頭の村井 純先生

 教頭の村井 純先生は、この取り組みの背景を次のように語ります。
「これまで本校では、研究者のように深く思考し続けるEDGEと、英語を軸に国際感覚を育むVISTAという、それぞれ異なるアプローチで21世紀に活躍する人材を育ててきました。そのうえで『互いの良さを融合させれば、さらに豊かな学びが実現できるのではないか』という発想から生まれたのがNEXUSです」(村井先生)

 NEXUSの特徴は、多様性を「特別なイベント」ではなく、「日常」に組み込んだことにあります。ホームルームは、日本人教員とインターナショナルティーチャー(以下、IT)によるデュアル担任制。朝のホームルームはITがオールイングリッシュで進行します。
「英語が初めての生徒は、最初はやはり驚きます。でも、そこにはしっかりとした仕掛けがあります。クラスにはバディシステムがあり、英語を理解できる生徒が隣でサポートしてくれますし、日本人教員も理解度に応じてフォローします。そのような場で生活するうちに、リスニング力や表現力が本当に伸びていきます。環境そのものが何よりの教材ですね」(村井先生)

サレジアン世田谷_刺激的な毎日だから、学校は楽しい場所なのです
刺激的な毎日だから、学校は楽しい場所なのです

 こうした環境が育てるのは、英語力だけではありません。「EDGEの生徒が持つ深い探究心はVISTAの生徒に刺激を与えます。一方で、VISTAの生徒たちの積極性に影響されて、EDGEの生徒もどんどん主体的に発言するようになる。すでに良い相乗効果を感じています」(村井先生)

 現在、校内には約20名のITが在籍し、日本人教員と日常的に英語で議論を交わしながら教育をつくり上げています。
「生徒たちが社会に出る10年後には、異なる考えを持つ人たちと協働することが当たり前になります。だからこそ、学校自体が社会の縮図であるべきだと思うんです。さまざまな人との出会いを通じて、自分の軸を育てていく。その経験こそが、社会で必要となる力につながると信じています」(村井先生)

「名もなき問い」に挑み続ける。
EDGEが育てたい"未知に向き合う力"

 NEXUSによって学びの環境は大きく進化しました。しかし、サレジアン国際学園世田谷中学高等学校が大切にしてきた探究の姿勢は変わりません。その核となるのが、EDGE(旧本科クラス)の学びです。

サレジアン世田谷_本科推進部長の市橋朋之先生
本科推進部長の市橋朋之先生

 本科推進部長・市橋朋之先生は、EDGEという名称に込めた思いを次のように語ります。
「EDGEには、『Express and Design your Gift as an Engine for the world』というメッセージが込められています。私たちが大切にしているのは、生徒一人ひとりが持つ興味や関心の芽を、自分だけの可能性として育てていくことです。それを言葉にし、探究を通して磨き上げ、社会を前進させる力へと変えていく。私たちが目指すのは、探究という自分だけの『武器』を持ち、新しい価値を生み出せる人材の育成です」

 そして、こう続けます。
「生徒たちには『まだ名前のついていない問いに、最初に踏み込んでトライできる人になってほしい』と伝えています。社会の変化を予測し、これからどんな課題が生じるのかを自ら捉え、第一歩を踏み出せる力。小さな気づきを出発点に問いを立て、仮説・検証のサイクルを回し続けられる人物を育てたいと考えています」

 EDGEの探究は、こうした考え方を日々の学びの中で実践する教育です。正解を覚えるのではなく、自分自身の問いを見つけ、考えを深め、社会との接点を探っていく。その積み重ねが、生徒一人ひとりの「自分だけの探究」を育てています。

サレジアン世田谷_ゼミをはじめ、プレゼンの機会が豊富にあります
ゼミをはじめ、プレゼンの機会が豊富にあります

 その象徴が、中2から高2までの生徒が所属するゼミ活動です。学年を越えて研究を続けるこのゼミでは、2026年度から中2・中3のゼミ時間と、高1のゼミEXの時間を1時間重ねる時間割へと変更されました。

「ゼミの時間内だけでなく、日常のあらゆる場面からヒントを得て研究を進めてほしいという意図から、時間の使い方を工夫しました。学年を跨いで集う時間には、研究の経過報告や、大学のゼミで行うような『輪講』を実施しています。
 高1生にファシリテーションを任せているのですが、高校生が論文を要約してディスカッションのテーマを設定し、中学生も含めて議論を深めていく姿が見られます。高校生から出されるフィードバックの鋭さには、思わず感心してしまうほどです。我々教員が指示を出さずとも、自分たちで主体的にゼミを動かすシステムが完成しつつあります」(市橋先生)

 同校の探究教育を取材する中で見えてきたのは、探究が一つの授業や取り組みではなく、「文化として受け継がれていくもの」として根付いている姿でした。

 教員が一方的に教えるのではなく、上級生が培ってきた知見や姿勢が下級生へとつながり、生徒同士が刺激し合いながら学びを深めていく。探究する姿勢が世代を超えて息づく、同校ならではの学びの文化そのものだと感じました。

「何を学びたいのか」が進路をつくる。
探究が育む主体性

 EDGEの探究は、教室の中だけで完結するものではありません。問いを立て、考え続ける経験を重ねることで、生徒たちは社会とのつながりを見出し、自らの将来とも向き合うようになります。その大きな転機となる出来事として、市橋先生が挙げてくださったのが、中3生が参加する「関西探究合宿」です。

サレジアン世田谷_それぞれの振り返りをシェアすることで更なる学びにつながります
それぞれの振り返りをシェアすることで更なる学びにつながります

「3泊4日で行う探究合宿は、生徒たちにとって大きな転換期になります。実際、昨年度の探究合宿でも現地でさまざまな施設や大学などを訪問したのですが、宿で行われた振り返りでは単なる行動記録ではなく、『その施設の持つ性格を抽象化し、自分の研究とどう結びつくのかを言語化しなさい』というハイレベルな課題を課しました。
 最初は戸惑い、大いに苦しみながらも時間をかけて話し合っていた生徒たちですが、逃げずに向き合ったことで、研究の質が一段階も二段階も上がりました。視界が一気に広がり、自分の研究が社会とどう接続しているのかを立体的に捉えられるようになったのです」(市橋先生)

 探究とは、興味のあるテーマをただ調べることではありません。社会との接点を見つけ、自分の研究をより深い視点で捉え直す。その経験を重ねることで、生徒たちの問いはさらに磨かれていきます。

サレジアン世田谷_自分自身が学びたいことと真剣に向き合えるのも「関西探究合宿」の魅力の一つです
自分自身が学びたいことと真剣に向き合えるのも「関西探究合宿」の魅力の一つです

 その変化は、進路選択にも表れています。市橋先生は、昨年度末の進路希望調査で、生徒たちの志望理由に大きな変化を感じたと話します。
「当時の中3生(現高1生)に進路希望調査を行った際、志望理由の自由記述欄を分析して驚きました。多くの生徒が『有名大学だから』という理由ではなく、『今ゼミで●●を研究している。これを大学でもさらに深めたいから、この学部・学科を選ぶ』という明確なロジックで進路を描いていたのです。
 自分の探究軸を持ってキャリアを主体的に選択できている。これこそが、本校の探究教育がもたらした最大の成果であり、本当の意味でのウェルビーイングにつながる選択なのだと思います」

 大学名を目標にするのではなく、「何を学びたいのか」を軸に進路を考える。その背景には、探究を通して自分の興味や社会との接点を言葉にしてきた積み重ねがあります。同校の探究の取り組みは、大学受験のための実績づくりではなく、生徒一人ひとりが自分らしいキャリアをデザインするための土台になっているのだと感じました。

高度な英語力を育むVISTA、
知的好奇心をさらに深めるMEDICO

サレジアン世田谷_海外大学の教授の授業を受ける機会もあります
海外大学の教授の授業を受ける機会もあります

 ここまで紹介してきたEDGE(旧本科クラス)が、「問い」を起点に社会課題と向き合い、自ら考え、行動する力を育む学びだとすれば、VISTA(旧インターナショナルクラス)は、高度な英語運用能力と国際的な視野を育むプログラムです。

 VISTAでは、英語によるディスカッションや論理的思考を重視した授業を展開しており、国内難関大学の国際系学部だけでなく、海外大学への進学も見据えたカリキュラムが特徴です。

サレジアン世田谷_「自分の得た理系の知見や技術を、どう社会全体の進歩や他者への貢献に還元できるか」に挑戦するMEDICOの学び
「自分の得た理系の知見や技術を、どう社会全体の進歩や他者への貢献に還元できるか」に挑戦するMEDICOの学び

 また、2026年度からは、理数分野への関心をさらに深めたい生徒を対象とした「MEDICO(メディコ)」も本格始動しました。医療やテクノロジー、データサイエンスなどをテーマに、教科を横断しながら社会とのつながりを探究するプログラムです。

 さらに、EDGE・VISTA・MEDICO、それぞれ異なる視点を生かしながら、多角的なものの見方を養う「ニュース分析」の取り組みも始まりました。

 市橋先生は、そのねらいを次のように説明します。
「例えば先日、『京都の観光公害(オーバーツーリズム)と市バスの運賃値上げ』というニュースを取り上げました。EDGEの視点からは『一般的な社会問題・歴史的背景』として解説し、MEDICOの視点からはデータサイエンスの観点で『値上げによって本当に影響を受けるのは誰か』を数値化・可視化して提示しました。そしてVISTAの視点からは、全編英語で『負担の公正性とは何か』という国際的な倫理課題としてアプローチしたのです。
 生徒たちは『同じ一つのニュースでも、見る角度によってこれほど捉え方が変わるのか』と驚いていました。物事を多角的に捉えるこのトレーニングは、自分の研究テーマを深めるうえでも非常に強力な武器になっています」

 取材を通して印象的だったのは、それぞれのクラスの学びが独立するのではなく、有機的につながるよう設計されていることでした。アプローチは異なっていても、その根底には「問いを深め、社会とつながる学び」という一貫した教育思想が流れていることがわかります。

多様な価値観が出会う。
その先に広がる、新しい学びの可能性

サレジアン世田谷_都心に位置しながら、緑豊かな環境です
都心に位置しながら、緑豊かな環境です

 今回お話を伺って感じたのは、同校が進める教育改革は、新しいコースや制度を導入すること自体が目的ではないということです。

 EDGEでは問いを立て、深く探究する力を育み、VISTAでは世界へと視野を広げる。また、MEDICOでは科学的な視点から学びを深め、NEXUSでは多様な価値観を持つ仲間と学び合う。それぞれの学びを通じて、自ら考え、他者と協働しながら、これからの社会で必要となる力を育んでいます。

 村井先生は、教育に「完成」はないと話します。
「社会が変われば、学校も変わり続けなければなりません。一方で、生徒一人ひとりを大切にし、自分らしい可能性を伸ばしていくという教育の本質は変わらないと思っています。これからも、生徒たちの挑戦を支えられる学校であり続けたいですね」

 教育を取り巻く環境は、これからも変化し続けていくでしょう。だからこそ、知識を身につけるだけではなく、自ら問いを立て、多様な人と関わりながら、新たな価値を生み出していく力が、これまで以上に求められています。

 何より心に残ったのは、生徒たち一人ひとりの可能性を信じ、その「問い」や「強み」を丁寧に育てようとする先生方の姿勢でした。生徒たちが多様な仲間と出会い、対話し、自分らしい学びを深めながら未来を切り拓いていく――。同校ならではの挑戦は、これからも進化を続けていくことでしょう。

 ぜひサレジアン国際学園世田谷中学高等学校に足を運び、生徒たちが生き生きと学び、多様な価値観が交わる学園の空気を感じてみてください。

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