学校特集
東京成徳大学中学・高等学校2026(2)
掲載日:2026年9月1日(火)
1926年の創立以来、「徳を成す人間の育成」という建学精神を掲げ、グローバル人材の育成を目指す東京成徳大学中学・高等学校。グローバル人材の育成に向けた熱心な教育と同様に注目を集めるのが、2023年度から始めた独自の入試「Distinguished Learner選抜入試(以下、「DL入試」)」です。採点担当である入試広報部部長で中高一貫部教頭・英語科の和田一将先生と教務部・社会科の中川琢雄先生に、「DL入試」の舞台裏とその進化について伺いました。
受験者の数・質は年々向上、
"成熟期"に入り、注目度が高まる「DL入試」
東京成徳大学中学・高等学校(以下、東京成徳中)では、中高6年間を通して、創造性・チャレンジ精神・主体性の備わった「Distinguished Learner(自律した学習者)」の育成を目指しています。
「DL入試」は、そうした資質を持った生徒を選抜するための試験です。教科型の筆記試験では測ることのできない主体性・創造性・チャレンジ精神を、個人でのアイデア創出とグループワークを通じて見極めています。
初年度のテーマは「ごみのアップサイクル」、2年目は「ソーシャルグッド(自らこまめに電気を消したくなる気持ちになる方法)」、昨年は「食品ロス」、そして2026年度のテーマは「町の図書館の有効活用」でした。
「2026年度のDL入試の作問でいちばん頭を悩ませたのは生成AIの存在でした。テーマの言葉をそのまま検索すれば、それらしい答えがいくらでも出てきてしまいます。その子自身が考えたプロセスが見える問題にしなければならないと考えました。これが昨年度と今年度入試のいちばん大きな違いでした。悩んだ結果、我々がたどり着いたのが、『町の図書館の有効活用』というテーマでした。"図書館"にしたのは、大抵の子が知っている、行ったことがある、イメージできる場所だからです。そして、アイデアをきちんと論理立てて考えることができるかを見るため、アイデアの目的・ルールも提示しました」(中高一貫部教頭の和田一将先生)
学校が示したアイデアの目的は以下の2つです。
① 性別・年齢・国籍を問わず、街の図書館利用者を増やす誰もが立ち寄りたくなるきっかけをつくろう。
② 地域住民の読書活動を活性化する企画・イベント・取り組みを行う。来館後に読みたくなる体験が続く工夫を。
また、ルールとして「施設の大規模な建て替えは不可」「目的②の企画は、目的①で考えたアイデアを土台にすること」を提示しました。
「最初の目的①だけを提示すると、"とにかく人を集めるイベントを考えればいい"という短絡的な発想に流れがちです。一時的に人が集まればいいという話ではなく、その後も図書館が使われ続ける仕掛けになっているか。そこが担保されていないと、アイデアとしてはどうしても弱くなってしまいます。目的を2段重ねにするというのは、これまでのDL入試にはなかった設計です」(和田先生)
「Distinguished Learner(自律した学習者)」の資質、また論理的な思考力をきちんと見極められるよう、「DL入試」の中身も年々進化しています。同校ではDL入試の担当教員数名が半年以上もの月日をかけ、ときに議論を行いながら作問を行っています。他にはない入試とあってじわじわと注目を集め、出願者数は初年度の26名から今年度は64名へと大きく伸びました。
「率直に言って、出願・受験者数だけでなく、レベルも年々上がっています。グループワークでは活発にやり取りしたり、協力し合えたりする子が多く、発表もとても上手です。DL入試の体験会でも、思わずこちらが感心するような子が増えている実感がありますね。アイデアを発表してもらうときも、最近は『私の意見はどうですか』、『この考えを聞いてください』と積極的な子も多数います。特に近年のDL入試受験者は相対的に学力も秀でている傾向にあり、"ペーパーテストが苦手だからDL入試で受験する"ではなく、入試内容や意図を深く理解し、"この入試なら自分の能力を存分に発揮できる"とご判断いただいて受験するお子さんが増えているのは確かですね」(教務部の中川琢雄先生)
"考える"と"伝える"を試す
2段階の入試プログラム
毎年2月5日に実施される「DL入試」。2月1日〜4日までに行われる筆記試験との併願者も多く、一般合格を手にしながら、「DL入試」で特待生を目指す受験生もいます。東京成徳中で開催される「DL入試」説明会や体験講座などに参加して、入試に臨む受験生が半数以上だそうです。以降、「DL入試」の流れについて詳しくご紹介します。
「試験①:個人活動(60分)」と「試験②:グループワーク(80分)」で構成されています。
<個人活動・アイデアの創出>
与えられた課題について、まず個人でアイデアを考え、回答用紙に文章とイラストなどを用いて企画書としてまとめる。受験生一人ひとりに色鉛筆などが準備される
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<個人活動・一次提出>
試験開始30分後に一次提出。その間に全体に向けてアドバイスがあり、出題の意図を汲めているかを確かめたり、さらに良いアイデアにするために再考したり、企画書をブラッシュアップさせる。最後に、回答用紙とともに、アドバイスを踏まえてどのように再考したかがわかるチェックシートを提出
<グループワーク1>
4~5名の男女混合のグループに分かれ、各々がまとめた企画を紹介し合う
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<グループワーク2>
みんなで意見を出し合いながら企画をひとつに絞る。その企画がより良いものになるように話し合い、練り上げる
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<発表>
グループで考えた企画をまとめて5分程度で説明・発表をする。模造紙に書き込む、ホワイトボードを使用するなど、表現の仕方は自由
試験中は、受験生4〜5名に対し、2~3名の採点官がつきます。そして、受験生に問題の意図をきちんと汲んでもらうために、そしてより高得点を狙えるように、試験官の先生方は事前にすり合わせたアドバイスを必ず行うそうです。そのアドバイスにより、受験生が考えを軌道修正したり、アイデアを変えたりした場合は、それも「トライアンドエラー」評価の対象にしているそうです。
また、グループワークで打ち解けて仲良くなり、入試後は笑顔で話しながら帰る受験生の姿も見られるといいます。
2026年度のDL入試の様子はこちらでご覧いただけます。
東京成徳大学中学校(東京・共学校)「DL入試」26年入試レポート|受験情報ブログ|ONETES
"成長"できる入試
評価の裏側にある学校の思い
DL入試の評価観点は、東京成徳学園の教育ビジョンである「成徳の精神を持つグローバル人材」をもとに設けられています。合否の評価には透明性があり、判断基準が明確に示されている点もこの入試の大きな特徴です。
採点官は入試の一部始終を観察し、事前に公開されているルーブリック評価に基づいて5段階で評価を行います。ルーブリックで評価されるのは12項目。主体性・創造性・チャレンジ精神の3本柱に、各4つの採点項目で分けられています。これら12項目は、「DL入試」を新設する際、東京成徳中の先生たちがじっくりと時間をかけて生み出した評価軸です。
■「DL入試」の評価
●主体性:リーダーシップ/論理的に考える力、論理的思考力/チームワーク/客観的視点・判断力
●創造性:独自性、発想力/デザイン、開発/探究心/批判的思考力
●チャレンジ精神:好奇心/トライ&エラー/自己調整力、計画性/社会とつながる(枠を越える力)
【ルーブリックの詳細はこちらでもご覧いただけます】
https://www.tokyoseitoku.jp/js/admission/examination/distinguished.html
「DL入試」の合否は、採点官の主観や曖昧な基準で判断されることは決してありません。採点官たちはこのルーブリックを用いて各々の採点表を突き合わせて、すべての受験者の点数について討論を行います。そして、最終的に数字が記された採点表で合否を決定し、後日、受験生たちにも渡されるといいます。その採点表には、180字程度のフィードバックコメントも書き添えられているそうです。
「私たちは、この入試を『成長の場』としても捉えています。合格・不合格だけで終わるのではなく、自分の考え方や行動を振り返るきっかけになってほしい。そのためにも、評価をブラックボックスにはしたくありません」(中川先生)
問題づくりから、試験方法、採点・評価方法までのすべてにおいて、一貫して同校の教育エッセンスと熱い想いが詰まっている「DL入試」。成績上位者には入学金&施設費と2年間の授業料実質免除のA特待資格、もしくは入学金&施設費免除のB特待資格を付与する制度も整えています。
入学後も輝き続ける!
「DL入試」出身生のポジティブな挑戦力
2023年度にスタートしたDL入試も、今年で4回目。第1期生は高校生となり、学校生活のさまざまな場面で存在感を発揮しています。先生方が共通して感じているのは、DL入試で入学した生徒たちの「前向きさ」と「挑戦を楽しむ姿勢」です。
「DL入試で入学した生徒たちはみんなポジティブですね。また、自分の強みと弱みを客観視し、その弱みを克服するために何をすべきかを自ら考え、行動できる子が多いです。客観視できる、考える力がしっかりと備わっている点は、DL入試を突破しただけありますね」(和田先生)
「チャレンジ精神が旺盛な子、まったく物怖じせずにあらゆる人とコミュニケーションを取る子、DL入試を経て入学したことにすごく誇りを持っている子、さまざまいますね。例えばある生徒は、ピアノが非常に得意というわけではないものの、合唱祭でピアノ演奏者に立候補しました。自分で決めたからには最後までしっかりとやり抜くという思いで練習に励んでいましたね。失敗を恐れず挑戦する子が本当に多いです。できるかどうかではなく、『まずやってみよう』という意欲があります。その姿が、周囲の生徒にも良い影響を与えていると感じます」(中川先生)
ほかにも、授業で積極的に意見を発表し、グループワークでは自然と周囲を巻き込みながら議論を進める、生徒会活動や学校行事でも、自ら手を挙げて役割を引き受けるといった姿が見られるそうです。
高めてきた経験値を
発揮できる場
教科型の筆記試験とは大きく異なるDL入試。試験対策が取りづらい印象がありますが、受験を検討する親子が家庭で日頃からできる対策、意識すべきことを聞いてみました。
「特別な受験対策はありません。しいて挙げれば、普段からいろいろなことを突き詰めて考える子、身のまわりのさまざまなものに興味を持ったり体験したりする子は『DL入試』に強いと思います。豊富な経験値を持つということは、それだけで引き出しの数が増えていきます。例えば、何気ない日常の中で『曇りの日には、こういう自然現象起きているけど、なぜだろう』といったことを考えるのもいいと思います。その経験値によって増やした引き出しが、『DL入試』で活かせるのかもしれません」(中川先生)
普段から身のまわりで起きていること、ニュースなどの話題をテーマに、親子で話し合うことも良さそうです。また、「自分の考えを表現したい」、「新しい物を作りたい」、「とにかく挑戦が好き」という受験生にもおすすめできる入試といえるでしょう。
「『DL入試』の難易度は確かに高いものですが、ぜひ楽しんで受けてほしいですね。考えることは、本来楽しいことです。個人の思考力や経験をこれほど活かせる入試はきっと他にはないでしょう。試験後は、本校から詳細な評価のフィードバックもお渡ししますので自分の成長につなげることもできます。受験生たちには、ありのままの自分でどんどんぶつかってきてほしいですね」(中川先生)
教科書に載っている知識を覚えることももちろん大切です。しかし、まず自分で考え、そして仲間と議論しながらより良い答えを探していく----そんな学びのおもしろさを教えてくれるのが「DL入試」なのです。
同校では、DL入試の説明会・体験会も開催しているので、ご興味のある受験生親子はぜひ参加してみてください。
