新渡戸文化中学校の「マイ探究入試」
新渡戸文化中学校(東京都中野区)の「マイ探究入試」が2026年2月3日(火)に行われました。入学後の学びとダイレクトにリンクする、この入試についてお知らせします。〈取材・撮影(一部)・文/市村幸妙〉
好きや創意工夫を自分の言葉で伝える「マイ探究入試」
第1志望者が入学者の7〜8割を超える、新渡戸文化中学校・高等学校。2027年に創立100周年を迎える同校ですが、なぜこんなにも受験生親子を惹きつけているのか、その秘密と魅力を探るべく、2月3日(火)午後に実施された「マイ探究入試」について見ていきます。
この「マイ探究入試」は、2021年入試から行われていた「好きなこと入試」をアップデートさせたもの。人間の持つ能力は複数あり、教科型入試だけでは見えてこない力や頑張ってきたことを発揮してほしいという思いで作られました。
試験はプレゼンテーションと口頭試問が行われますが、出願時に自分の好きなことや興味のあることについての取り組みを2分ほどにまとめ、「マイ探究動画」として提出します。
同校教頭の奥津憲人先生に伺いました。
「好きなことや興味のあることについて、どんな取り組みをしてきたかを動画でアピールいただき、入試当日にその補足をプレゼンテーションしてもらいます。その後の『口頭試問』で、受験生本人の気持ちや思い、志望動機などを伺うという、3段階になっています」(以下、奥津先生)
新渡戸文化で重視されていることが「動画の半分以上は⾃分の⾔葉で説明をしてください」として、入試要項に掲載されています。
「その子のやりたいことが、新渡戸文化という環境と調和したときにどれだけ発展していけるかを大切にしています。端的に言うと、国語や算数といった教科は得点が出るので出来不出来がわかりやすいですが、そうではない視点で、本校を使って彼らがどう成長してくれるのか、どんな面白いことが起こりそうかということに重きを置いています。そのため、受験生自身の言葉を傾聴したいのです」
“好き”を深めて前進させ、“探究”として捉える
この「マイ探究入試」の評価ポイントが生徒募集要項に記載されています。
・ ⾃ら主体的に探究していく姿勢がある
・ 好きなことや興味のあることを、“誰か”や “社会”の幸せのために繋げようとする姿勢がある
・ 本校の教育理念や⽅針をよく理解している
・ 本校で成し遂げたいビジョン(新渡⼾⽂化をどう活⽤したいか)が明確である
“好きなこと”から一歩踏み出して、“探究”という視点をもつことで、新渡戸文化での学びへの橋渡しとなるべく、アップデートした「マイ探究入試」。
「昨年までの『好きなこと入試』は、入試当日の約5分間のプレゼンテーションのみだったため、それだけではその子を見極め切れないという思いがありました。そこで事前動画をご提出いただきあらかじめ拝見しておくことで、我々もその思いを理解した上で口頭試問に入れるというメリットがあり、より深いマッチングを図ることができると考えています」
奥津先生はさらにこう続けます。
「本校では『入試で育つ』をモットーとして掲げています。特にこの『マイ探究入試』で願っているのは、受験に向かう過程で、受験生本人が自分自身を見つめ直せる機会にしてほしいということです。その様子をご覧になられている保護者の方も、お子様のことを少し引いて広く見たり、普段から会話を重ねたりすることで、その子の可能性や課題に改めて気づけるのではないでしょうか。
受験生本人も保護者の方も受験を通じて、さらなる視点が得られ、育っていける部分がきっとあると思います」
主体性と挑戦心とアウトプットを重要視する新渡戸文化の学び
「マイ探究入試」を突破し、新渡戸文化で大きく成長するためには、同校の理念や学びを理解して臨む必要があります。
新渡戸文化らしさの現れる特長的な学びに、毎週水曜日に実施されている「クロスカリキュラム」があります。中学生は3学年合同で各自の興味関心に則ったラボ形式で水曜日の丸一日を使い、探究学習にじっくり取り組みます。
「生徒たちの“やりたい気持ち”を大切にしているので、最初に『クロスカリキュラムでどんな探究をしたいか』というアンケートを取ります。その上で教員間にて調整を行い12程度のグループを作り、生徒はラボを選択して探究活動に励みます。教科書の中に定義されない、収まりきらない、それぞれのやりたいことをこの時間に深めています」
このラボは生徒たちの興味関心に基づくものなので、継続されるケースもありますが、基本的には毎回異なるものとして年2回設定されます。
同校では10月の「新渡戸祭(文化祭)」と3月頃の「スタディフェスタ」という学習成果発表会をふたつの大きな柱として、生徒たちは自身の学びをアウトプットしています。
「新渡戸祭では自分の好きや興味関心を発表することで、“来場者の誰かを楽しませる、ハッピーにする”をテーマとしています。一方のスタディフェスタではその自分の関心事で、社会や誰かの困りごとの解決をテーマに掲げています。これらのテーマ設定は、探究という学びにおいて社会や他者といった絶対的な視点をもち、自分軸である好きや趣味の範囲を超える必要性があると考えているからです」
新渡戸文化では発信することを日常的に大事にしているので、プレゼン型での面談や期末テストも実施されています。
高い受験率を誇る「マイ探究入試」
「マイ探究入試」の募集定員は若干名。出願者数は22名ですが、すでに合格を果たしている出願者もいるため、2月3日午後の受験者数は13名。入試後半に差し掛かる日程にもかかわらず、出願者全員が受けにきており、かつ多くの子がそれまでの入試回と併願していることからも、受験生たちの熱意が伝わってきます。
当日は14時50分が出席確認時刻となっています。
14時20分から受付が開始され、有志の在校生が校門で受験生たちを出迎えます。
試験会場は3教室用意されており、15時以降から受験番号順に3分程度のプレゼンテーションを行います。口頭試問を含めたすべての時間をあわせても15分程度。この15分間に自分の想いをぶつけます。
どんなテーマで受験生たちは臨んだのか
奥津先生に、受験生たちがどんなテーマで「マイ探究動画」に臨んだのかを伺いました。
「例えば、ずっと続けてきた剣道で得た学びについて熱く語ってくれた受験生や自分で設定やストーリーを考え、物語を紡いでいるという子、ぬいぐるみなどを作っていた受験生は、手芸を通じて感じた自分自身の心のありようや生じた変化などを話してくれました」
その他にも、アクロバットを習っている受験生は、自分自身で考えて工夫したことでできなかった技が成功し、それを披露した体験を語ったのだとか。また、自分が飼っている犬の仕草を不思議に思った受験生はその生態について、観察したりさまざまな文献に当たったりして、自分なりに仮説を立て考えたといいます。蛇が好きという子は「蛇はなぜ嫌われているのか」と疑問を持ち、論文なども調べつつ、なんと200人以上にアンケートを取り、その理由を探ったのだそうです。
もうこれだけでもさまざまな個性と熱量を持つ生徒が集うことが見えてきて、思わずこちらがワクワクします。
「好きなことややりたいこと、気になることなど、起点に自分があることは、入学後の学びにも繋がる大切なことだと改めて感じました。小学生でもしっかり課題を見つけて、専門書を調べたり、挑戦していたり、アウトプットの場を設けていました。自分の趣味や好きから一歩進んで突き詰めていく部分が興味深かったですし、そうした前向きな姿勢が見られて良かったです」
これらが以前の「好きなこと入試」と比較し、内容がより深化したと先生方は手応えを感じられていました。
一人ひとりの輝きを見出す入試
「マイ探究入試」の合格者は3名。このシビアにも見える合格者数は、先生方がいかにその子の入学後を思い描きマッチングを重視したかという証左です。実はこの合格者の中には、教科型入試で残念な思いをした受験生もいました。
「教科型入試の得点が必ずしも高くなかった子でも、思いをしっかりと自分の言葉で語ってくれ、かつその行動が他者に良い影響を与えている様子も見られて、その子の輝いている部分を見出すことができました。教科型入試では発揮しきれなかった、一人ひとりが光る部分を見られたことや入学後のビジョンとの深いマッチングが図れたことで、この入試を実施して良かったと改めて思いました」
新渡戸文化の学びとまさにリンクしているのが「マイ探究入試」なのです。
「事前提出の『マイ探究動画』と当日のプレゼンテーションの双方の評価が合格に結びついたという実感があります。
本校のクロスカリキュラムを通して、その子たちが持つ良い部分をそのまま続けて伸ばしてもらえたら本当にいいですね。入学後、一緒に学べることがとても楽しみです」
と奥津先生は笑顔を浮かべます。
主体性を涵養する環境が自律型の学習者を育む
これまで新タイプ型入試での入学生は、どう育っているのでしょうか。
「本校の生徒たちは“やりたいことをやる”エネルギーを持っていますが、『好きなこと入試』で入学した生徒は、より学校全体の雰囲気を盛り上げることに寄与する存在です。
特に高校生になると、高入生が持つ勉強などやるべきことをやる力との掛け合わせがいい方向に向かっていることを感じます」
それぞれの学びのスタイルは、多様なあり方を寛容し、相乗効果を生んでいます。自分で考えて動き学べる、「マイ探究入試」の入学者がもつエネルギーは、他の生徒たちにも伝播することでしょう。
「本校は自律型の学習者の育成を目指していますが、入学したからとたちまち自律できるわけではありません。もちろん、生徒が望めば全力でサポートするリソースや教材も十分に揃えており、個別最適化された自分で学べる教材もあるので青天井で伸びていくことができます。ただし、スイッチがどこで入るかわかりませんし、それまではやはり適度なストレスが必要なときもあるでしょう。我々は当然支援していきますが、保護者の方にも伴走したり見守っていただいたりという必要性も認識いただいております」
主体性を大切にし、挑戦を恐れず試行錯誤を重ね、創意工夫できる環境を提供する新渡戸文化。支持される教育の一端が、この入試を通じて見えた気がしました。
第1回学校説明会が、5月23日(土)14時〜16時に学校とオンラインで開催されます。同校の学校方針に加え、学びと探究、そして未来について、あわせて2027年度入試の概要も話される予定です。
新渡戸文化中学校・高等学校の教育に触れる絶好の機会です。ご予約の上、ぜひ奮ってご参加ください。
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