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受験情報ブログ

【千葉県立千葉中学校】進化する公立中高一貫校 Vol.2

150年の伝統が裏打ちするクリアな思考の解像度

1878年創立の千葉県立千葉高等学校・千葉中学校(以下、県千葉)はじきに創立150周年を迎える。県下最古の歴史と屈指の進学実績を誇り、2008年の併設中設置後は6ヵ年一貫の深い学びを推し進めてきた。徹底した自律の精神と高度な授業、そして個性を尊重する独自の校風のなか、生徒たちはいかに自らの可能性を伸ばしているのか。その現場に迫る。

高度な教材×Teamsで挑む生きた英語の発信力

次に英語の授業へ向かう。中1は滝口通史教諭とALTによるダブルティーチングだ。教材には私立進学校でよく使われる『NEWTREASURE』(Z会)を用いていた。公立中でこの高度な教材を使えるのは、県千葉のハイレベルな授業とそれについてくる生徒達の存在があるからだ。副教材には『チャンクで英単語』(三省堂)を併用。授業冒頭、副教材から「Letthechildrenplay」といったフレーズをテンポよく唱和させ、意味の塊(チャンク)で英語を捉える感覚を身につけさせる。

今回のリーディングで扱う『NEWTREASURE』の「Lesson4Read」は、米ワシントンD.C.にあるスミソニアン国立動物園が登場する章。本文に出てくるゾウやパンダ、ヒョウの生態を追う際、教諭は「HaveyouseentheanimalsatUenoZoo?」と身近な例に置き換えて解説する。教科書中の「三単現のs」や疑問詞(Where/When)のルールをただ暗記させるのではなく、実際の動物の様子を思い浮かべさせながら、自身の言葉で状況説明できるよう繋げていた。

一方、中3はグラマーで担当はこのクラスの担任でもある田口楓教諭。黒板に書かれた「force(~に・を強いる)」の解説から、教室は一気に盛り上がりを見せる。映画『スター・ウォーズ』に出てくるあの「フォース=理力(見えない力)」のことだ。「ヨーダがよく言っている!」と嬉しそうに話してくれたのは米山日鞠さん。「日本語吹き替え版で観ただけですが、兄姉がよく字幕版を観ているので、次は私もチャレンジしてみたい」と声を弾ませていた。馴染みのある映画のキーワードや台詞と結びつくことで、単語のニュアンスが実感を伴って伝わるのは、中学に上がって以来の“映画の虫”である私には身にしみてわかる。

さらにこの授業で印象的だったのが、ICTツール(MicrosoftTeams)を使ったクラス全体での意見共有だ。生徒が端末から提出した「災害時にスマホで最初にすること」といった即興の英作文が、提出するとすぐに全員の端末画面に一覧で並ぶ。今までのようにノートをいったん教師が回収し採点・評価の後に返してもらうというやり方だと、他の生徒がどう書いたかはわからない。しかしここでは、クラスメイトがどんな表現を使っているかがその場でひと目でわかる。互いの作文を見比べながら、「こんな言い回しもあるのか」とすぐに参考にでき、生徒同士が学び合うピア・ラーニングとしても非常に効果的な仕組みだと感じた。

身近な歴史を発見する社会と活気溢れる国語

中2社会は歴史分野。越川隼人教諭が投げかけたテーマは「律令国家の成立」だ。越川教諭はまず、当時の役所の名残が全国の地名に残っていると指摘する。

「市川市の国府台があるでしょ。かつて下総国の国府が置かれていたことが由来で、千葉には同じような地名がわりに多いんだよね。同じ市川に国分という地名が残っているけど、下総国分寺が置かれたことから来ている」

房総半島南端の安房地方も四国の現在の徳島、阿波(粟国)から移住した一族が麻を植えたのが地名の由来とされるが、律令制とも大きな関わりを持つ。越川教諭は流暢に説明を続ける。

「資料集にもある通り、平安時代の『延喜式』にも載っているが、安房の特産品だったアワビが奈良時代には重要な租税として国家に納められていた。その証拠に平城京跡からは、安房の地名が書かれた木簡が多く出土している。当然アワビを生のままで都まで運ぶ技術はなかったので、塩漬けにし短冊状に切って干して捧げられていたんだけどね」

これがいわゆる熨斗(のし)アワビ。現在祝儀に使われる「熨斗袋」の由来である。身近な千葉の歴史と古代国家の税制にかくも強い結びつきがあると知り、生徒らも目を輝かせていた。

続く伊藤渉教諭による中2国語は口語文法の助動詞の識別に関し、プリントで学習を進めていた。「プリントの例文に『女性らしい態度』と書いてしまったけれど、ジェンダー的に難があったかな」

飛び込みで取材に入ったため、狼狽えた伊藤教諭が反省気味に話す場面も。その直後、2枚目に配られたプリントにすかさず書き込みをしていた宮崎慶仁君にカメラを向けると、周りから一斉に歓声が上がる。

休み時間になると、被写体となって照れる宮崎君を囲んで、「さすが慶仁!」とワイワイガヤガヤ賑やかな輪ができた。実は最近の数学の小テストで学年1位となり、廊下の壁に順位が貼り出されたばかりの有名人。華奢な印象だが、これでサッカー部では守りの要のセンターバックを務める。

「テストではケアレスミスを出さないように意識しました。同じクラスにライバルがいるんですよ。廊下に1位と貼り出された時はやっぱり嬉しかった」

見た目とのギャップと、飄々とした語り口の中にも覗く、芯の強さがすでにして県千葉生らしい。

さて、充実の給食タイムを終え、午後の校内を回りだすと、1年2組の教室から賑やかな英語のトークが聞こえてくる。しかし、この授業は意外にも道徳だ。副担任の保月友美教諭の投げかけたテーマは「節制・節度」。教諭の専門は英語で、ポップなイラスト入りのフリップをモニターに映しながら、「人生で4回溺れたことがある」と自身の体験談を英語混じりに語り始めた。

“Thefirsttimeis...Bath.”(2歳頃、銭湯で)

“Thesecondtimeis...Snow.”(4~5歳、雪に覆われた水路で溺れた犬を助けようとし)

“The3rdtimeis...Beach.”(小学生時代、海水浴場で溺れかけた妹を助けようとし)

“The4thtimeis...Snorkeling..”(30代、シュノーケリング中にシュノーケルの不具合で)

教諭がポーカーフェイスで繰り出す、やや自虐的な災難ネタに対し、生徒たちは「普通なら死んでますよ」などと容赦なくツッコミを入れる。実にテンポの良いボケとツッコミの応酬に、教室は終始大爆笑。すっかり雰囲気が温まったところで、授業は教科書中の『疾走、自転車ライダー』の読み込みへと進むのだ。

こうした中学での伸び伸びとした学びの先に、どんな表現力が育つのか。最後に訪れた高校の工芸室・美術室では、県千葉生の創造的な地力が遺憾なく発揮された授業が展開されていた。

Vol.3につづく

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