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【千葉県立千葉中学校】進化する公立中高一貫校 Vol.3

150年の伝統が裏打ちするクリアな思考の解像度

1878年創立の千葉県立千葉高等学校・千葉中学校(以下、県千葉)はじきに創立150周年を迎える。県下最古の歴史と屈指の進学実績を誇り、2008年の併設中設置後は6ヵ年一貫の深い学びを推し進めてきた。徹底した自律の精神と高度な授業、そして個性を尊重する独自の校風のなか、生徒たちはいかに自らの可能性を伸ばしているのか。その現場に迫る。

理論と計画が紡ぎ出す、高2芸術の表現力

高2でも芸術は選択必修で、音楽・美術・書道・工芸の4教科から選ぶ。(ただし、高1と同一教科)

まずは工芸教室へ。担当の花里教諭は美術大学で油絵と版画を専攻したベテラン教師だ。美術教諭として採用されたが、前任者の異動により工芸を担当することになった異色の経歴を持つ。

花里教諭は、「工芸では、生活に役立つ実用性があるものを作ります。モノづくりには技法や計画性が大事。生徒の理解を助けるために、説明用のパワーポイントデータを事前に配布したり、段取りを考えて制作するために、板書や工程管理表を活用したりしています。そして(アートなので)作品の中に、自分の考えや感じたことを表現して欲しい。ただきれいに作るだけでなく、考えて制作することが大切です。」と語る。

訪問した時、生徒は粘土でカップ&ソーサーを制作していた。四字熟語をモチーフとして作品を作るユニークな課題だ。プランシートに「粉骨砕身」と記した鎌田唯愛さんは、自身の発想を形にする上での工夫を明かしてくれた。

「把手をハンマーの形にして、ハートが粉々に砕けたデザインにしました。『骨』の字も入っているのでソーサーで骨を表現しています。」器としての機能だけでなく、面白いアイデアや遊び心といった発想力を大切にしていると感じた。

生徒の作品は釉薬をかけたあと、工芸室にある電気炉で焼成されて陶器として実際に使えるものになる。そのほかにも木工や金工などの授業が行われるため、電動糸のこぎりやボール盤などさまざまな道具が揃い、設備も整っている。

隣の美術教室でも、独自の表現が花開いていた。担当の長澤珠恵教諭が取り組ませているのは、箱の中に紙などの素材を組み合わせ、作り手独自の世界観を表す「コラージュボックス」だ。

「長い間、美術教育は感性重視の方向にあって、それゆえに苦手意識を持つ生徒もいましたが、優れた作品は実は理詰めでできているものなんです」(長澤教諭)「浮世絵が好き」という前原英那さんが題材に選んだのは、江戸後期に描かれた葛飾北斎や歌川国芳らの妖怪画だ。ウェブから画像を拾いプリントアウトした。

「でも、それだけだとどんよりしてしまうから、ギャップを狙って、あえて英文字のタイポグラフィを散りばめ、ポップにしてみました」

おかげで“怖い浮世絵”が見事に可愛らしく映える。そして、コラージュ本来の意図である、別の意味合いや特殊な視覚効果が生み出される。しかし、これもアイデアスケッチの段階から、構図や色彩をロジカルに計算し手繰り寄せた結果だ。感覚だけに任せない、確かな探究心と計画性を通じて、生徒たちは自分だけの美を伸びやかに形にしていた。

そして、放課後は部活を回る。取材日はたまたま運動部の活動をあまり見られず、文化部ばかりの紹介になるが、弓道部はこれまで全国・関東大会に出場してきた強豪で、昨年度は県大会兼東日本大会県予選で男子団体は堂々の1位、陸上部でも昨年は関東大会出場を果たしたメンバーがいる。文武両道は創立以来からのモットー、と強調させてもらいつつ、いくつか文化部の活動を追ってみた。

音楽室の合唱部は、7月頭に控えた葛城会(OBOG会)での披露に向け、「浜辺の歌」や「椰子の実」といった大正・昭和の名歌6曲を練習中だった。普段から中高合同で活動しており、この日も高校生に混じって、中学の女子生徒が朗々と歌っていた。少人数ながらも混声合唱の醍醐味が存分に感じられる丁寧で伸びやかな歌声が、静かに胸に沁み込んでくる。

将棋部の教室では、将棋盤を挟むペアだけでなく、定跡書と首っ引きで黙々と「一人対局」に没頭する姿が目を引く。いかにも進学校らしい探究心だ。昨秋には初心者で入部した女子生徒が県高校新人大会の女子個人戦で入賞を果たし、関東大会へ駒を進めるなど、新たな風も吹き込んでいる。

鉄道研究会では、黒板に書かれたダイヤの時刻表から駅名を当てるクイズに筆者も挑戦。幾度もヒントをもらいながら正解にたどり着き、思わず胸が昂った。夏休みに予定している東北への研究旅行は現地集合・現地解散。観光には目もくれず、ひたすら列車に乗り続ける過密な旅程の計画に、鉄研ならではの熱量が溢れていた。

授業で培われたロジカルな思考や計画性は、こうして放課後の部活動にも地続きで息づき、自分の「好き」や追及したいテーマに対し、生徒はとことん没頭できていた。そして、それこそが県千葉生が持つ底力なのだと実感するのだ。

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edu Polaris9月23日号の本企画「進化する公立中高一貫校」千葉県立千葉中学校の紹介記事中、校正漏れによる一部誤記がありましたので、訂正させていただきました。正しい表記は、本記事のWeb版と『edu Polaris』9/23号デジタルカタログに掲載しております。


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